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内部監査の実践(その2 )

本シリーズ「内部監査の実践」では、A社のB事業本部のQMSをISO9001:2015に沿って、具体的にどのように監査するかを、実例を中心に説明したいと思います。
その際、内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選2019.11.1」
https://www.technofer.co.jp/iso/mr-qa100-01/)、及び
「ISO 19011に準拠した内部監査に関する質問50選」を随時参考にしていきます。
https://www.technofer.co.jp/iso/hirabayashi-room/

品質マニュアルは従業員全員が知っているべき文書ですが、実際は品質マニュアルを使う場面が来ないと読まないのが現実だと思います。内部監査員も監査の時に品質マニュアルを改めて読むという方が多いと思います。
品質マニュアルは内部監査の基本文書となるもので、内部監査員は事前に必ず読んでおくことが必要です。加えて、品質マニュアルに記載されている標準書を事前に読んでおくことが推奨されます。

A社B事業本部の品質マニュアルの続きです。

【品質マネジメントシステム構成事項】
1 経営
1.1 組織
☆部門単位の組織図を簡潔に示す。


☆ 組織標準 KHR 101

1.1.1 責任及び権限
B事業本部における職位の責任は次の通りである。
事業本部長:会社のビジョン、経営方針に基づき事業本部方針を制定し,その実行のすべてに責任を負う。所属する部長を管理・監督することにより目標の達成をはかるとともに人材の育成をはかる。

工場長:事業本部長方針に基づき工場長方針を定め,所属する部長の管理・監督を通じて工場長方針の達成をはかる。以下の項目に対して責任を負う。
① 工場の安全衛生、環境管理。
② 製造で担当している分野に関する製品品質。
③ 部下の人材育成。

部 長:事業本部長方針に基づき部長方針を定め,所属する課長の管理・監督を通じて部門方針の達成をはかる。以下の項目に対して責任を負う。
① 部門の安全衛生。
② 部門で担当している分野に関する製品品質,サービス品質。
③ 部下の人材育成。

品質に関する各部門の業務内容と責任権限は次の通りである。
〔企画室〕
① 事業展開の企画立案と推進フォロー。

〔総務部〕
① 福利厚生,安全衛生業務。
② 建物営繕,電気などエネルギー管理,施設工事,公害防止など環境管理業務。
③ 業務改善活動事務局。

〔人事部〕
① 人材採用業務。
② 組織変更,人事考課業務。
③ キャリア開発、キャリア形成
④ 教育訓練業務。

〔開発部〕
① 商品企画,市場調査業務。
② イノベーション管理、商品開発業務。

〔生産管理部〕
① 生産計画の立案とその推進フォロー。
② 国内外注会社管理業務。
③ 海外生産計画の立案とその推進フォロー。
④ 倉庫業務。

〔購買部〕
① 購入先の調査,選定,管理業務。
② 購買に関する業務。
③サプライチェーンマネジメント

〔設計部〕
① 製品、サービスの設計に関する業務。
② 設計試作品の製作,評価業務。
③ 図面の発行,改訂,管理業務。

〔技術部〕
① 技術標準類の制定・配布・改訂管理業務。
② 新製品大日程計画の制定,推進,フォロー。
③ 材料,設備,加工技術の調査,改善業務。
④ 外注会社技術指導業務。
⑤ 技術試作品の製作,評価業務。
⑥ 不良解析,調査業務。
⑦ 業務改善提案事務局

〔品質保証部〕
① 品質マネジメントシステムの運用業務(品質マニュアルの維持管理)。
② 初期流動管理業務
③ 市場クレーム対応,調査改善業務。
④ 検査標準書の制定・配布・改訂管理業務。
⑤ 受入検査,出荷検査業務。
⑥ 安全,環境などの法規制調査,対応実施業務。
⑦ 計測器の校正管理業務。
⑧ 長期信頼性など製品品質保証業務。
⑨ QCサークル事務局

〔製造部〕
① 製造作業指示書の作成・制定・改訂管理業務。
② (品質、納期、コストの達成のための)工程管理。
③ 工程内検査業務。
④ 4M変動管理業務。
⑤ 設備・装置のメンテナンス業務。

☆分課分掌標準 KHR 102
品質マネジメントシステム監査標準 KQM 102

1.2 品質方針
B事業本部はA社の「理念」に基づき,事業本部長が品質方針を制定している。この品質方針は,全従業員に徹底するために各部門の部屋に掲示されている。また『社員ノート』にも「理念」とともに記載されており,従業員全員がいろいろな機会に利用できるようになっている。
【B事業本部品質方針】
(1) 顧客第一優先の徹底
すべての品質は顧客のためにあり常に顧客の品質ニーズに適合する活動を進める。
(2) 全従業員の品質保証活動への参加品質は工程で作り込まれる。全従業員が自分自身の持ち場の品質を保証する。
(3) 最新技術の開発とその応用当社の独創性尊重の気風を重んじ,常に新しいものヘチャレンジしていく。
(4) B事業本部の品質マネジメントシステムはISO 9001に準拠している。

1.3 経営会議
1. 3.1 品質マネジメントシステムの見直し
① この品質マネジメントシステムの維持のため,各部長はおのおのが責任を負う部署の品質マネジメントシステムの見直しを毎月の部門長会議に議事として挙げることができる。
② 年に2回実施される内部監査の結果を品質保証部がまとめ,品質マネジメントシステムの見直しを実施する。品質保証部長は,この見直し会議の議長として会議の開催,運営を行う。
③ 品質マネジメントシステム見直しの間隔
品質マネジメントシステム見直しの間隔は年に2回とする。
④ 記録の保管
品質マネジメントシステム見直しの記録の保管は品質保証部が行う。
記録の保管期間は3年とする。

☆品質マネジメントシステム見直し標準   KQM 103

1.3.2 検証の手段及び人員
(1) 以下のそれぞれの活動に訓練された人員を割り当て,顧客の要求仕様に合致した製品を設計し,製造する。
〔設計審査〕
設計部が主管し,関係部門の参加を得て,新製品企画段階,設計段階で行う。また技術部門が主管し,関係部門の参加を得て試作段階,初回量産段階で行う。
〔検査〕
品質保証部において材料,部品の購入時に受入検査を,また製品出荷時に出荷検査を行う。製造部においては工程内検査を行う。
〔内部監査〕
品質マニュアルに規定されたシステムが確実に実行されているかどうかを品質保証部が主管して内部監査を行う。

(2) 検査,監査の信頼性を高めるために,検査,監査の独立性を維持する。
〔設計審査〕
部長,課長または実際に設計を担当した者でない独立した者が行う。
〔検査〕
工程内検査は,その製造工程に携わっていない者が行う。
〔内部監査〕
監査対象の部門の者でない独立した者が行う。

1.3.3 管理責任者
品質マネジメントシステムの管理責任者は品質保証部長とする。

1.4 内部監査
(1) 品質保証部は,品質活動が計画された取決めに従っているかどうかを検証するために内部監査を実施する。
(2 ) 内部監査員は「B事業本部内部監査者認定コース」の履修者とする。
(3) 品質マネジメントシステム全体を対象とした定期的内部監査を年2回実施する。
(4) 品質保証部は,監査した結果を報告書にまとめ,被監査部門の部長に報告する。不適合事項が存在する場合には是正処置の依頼をする。
(5) 被監査部門の部長は,自部門の内部監査の不適合の是正処置を実行して,品質保証 部長に是正処置報告書を提出する。
(6) 品質保証部長は,是正処置が確実に実施されたかどうかを確認するためにフォローアップ監査を実施する。
(7) 品質保証部長は,内部監査の結果を,年2回,品質マネジメントシステム見直し会議に報告して,品質マネジメントシステムの改善に結び付ける。
(8) 内部監査に関する報告書,会議録などは,品質記録として品質保証部が3年間,保管する。
☆ 内部監査標準 KQM 123

次回もA社の品質マニュアルの続きを示します。
(つづく)