ISO情報

内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選 はじめに

 マネジメントシステムの認証が経営に役立っていない、との指摘が多くあります。組織のマネジメントシステム活動が、登録証を取得するだけの活動になっており、組織のシステム改善に対して有効に機能していないとの指摘です。組織がマネジメントシステムを構築する上で、内部監査及びマネジメントレビューはシステムを維持するために重要な活動です。
 組織の業務は、事業環境の変化に応じて変わりますが、手順が変わっても手順書は改訂されずそのままにされているので、誰も手順書を使わないという指摘も多くあります。マネジメントシステムの定着・改善には、手順書を最新化し、それを全員に理解させ、手順書と実際とが常に一致した状態にしておくことがマネジメントシステムの有効性を向上させる基本的な要件です。
 手順書と実際を常に一致させていくには、内部監査とマネジメントレビューを活用することが有効な手段です。内部監査は、決められたことがそのとおり行われているかを組織の適用範囲全てにおいて調査し、問題点が見つかればそれを改善することが要点です。そのようにすることで、組織の期待するパフォーマンスは向上し、さらにマネジメントシステムを改善しようとする気運が高まります。

1 内部監査とマネジメントレビューの課題

 マネジメントシステムを有効なものにする方策の一つに内部監査とマネジメントレビューの充実があります。この2つはマネジメントシステムに重要な要素ですが、組織がそれぞれの本質を理解して効果的に運用するには幾つかの課題があります。
 1点目は内部監査の位置づけについてです。内部監査が認証審査への対応だけの形式的なものになってしまい、その結果、活動がマンネリ化し、マネジメントシステムの改善に役立っていないということを多くの組織で見かけます。内部監査は本来システムの有効性を改善するために行うものですが、そうなっていない組織が多くあります。
 2点目は、内部監査員に権限がないため、指摘しても本質的な改善に結びつかないという問題があります。せっかく内部監査を実施して問題点を発見しても、効果の出る是正・予防処置が行なわれない、その後のフォローアップも十分に機能しないという問題です。
 3点目は、内部監査員の質、レベルです。監査員に要求されるレベルにまで達成するにはある程度の経験が必要ですが、多くの組織で訓練への時間が足りなく、十分に養成ができていないという問題です。
これらの問題は、本来経営者の行う「マネジメントレビュー」で議論されなければなりません。しかし、マネジメントレビューの目的が理解されず、内部監査と同様マネジメントレビューも形骸化しているという例が多くあります。

2 内部監査とマネジメントレビューの改善

 組織は、その実情に合わせて、内部監査とマネジメントレビューの改善をすべきですが、それには有効な対策を実施しなければなりません。以下に上げた対応策を参考に検討し、重要度に応じた優先順位で対策を実施していくことを推奨します。
 第1点は「経営者の理解と率先」です。経営者が関心を持ち、自らマネジメントシステムの改善にのりだすことが何よりも重要なことです。
 第2は、内部監査員への権限の付与です。内部監査は事前の準備/計画作成が重要ですが、それについては内部監査員に権限を与えている組織が多いと思います。同様に、是正処置に実施についても内部監査員に権限を与えるべきです。内部監査の後のフォローアップ活動は、組織に多大な価値を提供します。しっかりとした計画を立て、それに沿ってフォローアップ監査を実施し、是正処置を確認するまで一貫した権限を監査員に与えることが実効の上がる方法です。
 第3に、内部監査員のレベルアップが必要です。具体的な演習を含む教育と訓練(監査事例や指摘の手法など)を実践訓練(OJT)で組織的に行うことが必要でしょう。
内部監査の有効性は、当然のことですが実施方法に大きく左右されます。監査は時間をかけず短時間で要領よく行うものではありません。価値のある監査をやろうとすれば、時間はある程度かかるものです。
マネジメントシステムの改善に関する意味のある指摘をしようと思ったら、かなり踏み込んだ活動と検証をしなければなりません。多くの発見をするのではなく、良い発見を1つでもしたいものです。
 良い発見をするには、監査側だけでなく、被監査側にも真摯な対応が求められます。良い発見には、両者の協力が欠かせません。内部監査で発見された不適合は、是正・予防処置が取られ、かつ、フォローアップされてはじめて効力を発揮します。発見が改善に結びつく仕組みの確立が求められます。その仕組みの一つに経営者の義務である「マネジメントレビュー」があります。経営者が自組織のマネジメントシステム改善に強い意欲をもち「自分が動かなければ組織運営の効率化は果たせない」という認識でマネジメントレビューを実施することが望まれます。

3.内部監査とマネジメントレビューに関するQ&A

 これ以降、次のⅠ~Ⅹの課題に関する質問に答える形で、内部監査とマネジメントレビューの改善を包括的に説明したいと思います。

  • Ⅰ.経営者、管理者に関する質問(1~15)
  • Ⅱ.内部監査員に関する質問(16~20)
  • Ⅲ.内部監査員に関する質問②(21~30)
  • Ⅳ.内部監査の有効性に関する質問(31~42)
  • Ⅴ.内部監査報告書の作成に関する質問(43~49)
  • Ⅵ.是正処置、フォローアップ監査に関する質問(50~61)
  • Ⅶ.監査の各種課題に関する質問(62~73)
  • Ⅷ.共通テキスト(附属書SL)と内部監査の関係に関する質問(74~82)
  • Ⅸ.共通テキスト(附属書SL)と内部監査の関係に関する質問②(83~90)
  • Ⅹ.マネジメントレビューに関する質問(94~100)

関連コース
内部監査員2日間コースとして、下記のコースがございます。併せてご覧ください。
【品質】ISO 9001内部監査員2日間コース
【環境】ISO 14001内部監査員2日間コース
【情報セキュリティ】ISO/IEC 27001内部監査員2日間コース
【労働安全衛生】ISO45001対応 労働安全衛生内部監査員2日間コース
【食品】ISO 22000:2018年版対応 ISO 22000 内部監査員2日間コース

内部監査員スキルアップコース(1日)コースはこちらをご覧ください
【品質】ISO 9001:2015対応内部監査員スキルアップコース(1日)
【環境】ISO 14001内部監査員スキルアップ1日コース
【情報セキュリティ】内部監査スキルアップコース