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内部監査の実践(その6)

本シリーズ「内部監査の実践」では、A社のB事業本部のQMSをISO9001:2015に沿って、具体的にどのように監査するかを、実例を中心に説明したいと思います。
その際、内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選2019.11.1」
https://www.technofer.co.jp/iso/mr-qa100-01/)、及び
「ISO 19011に準拠した内部監査に関する質問50選」を随時参考にしていきます。
https://www.technofer.co.jp/iso/hirabayashi-room/

品質マニュアルは従業員全員が知っているべき文書ですが、実際は品質マニュアルを使う場面が来ないと読まないのが現実だと思います。内部監査員も監査の時に品質マニュアルを改めて読むという方が多いと思います。
品質マニュアルは内部監査の基本文書となるもので、内部監査員は事前に必ず読んでおくことが必要です。加えて、品質マニュアルに記載されている標準書を事前に読んでおくことが推奨されます。

A社B事業本部の品質マニュアルの続きです。

【品質マネジメントシステム構成事項】
5 購 買
5.1 全般
(1) 購買部は技術部からの購買要求書に基づき,購買部品の仕様,要求される品質を文書で明確にする。
(2) 購買部は購入先と,一般取引契約書と併せて,品質契約書を締結する。
(3) 品質保証部は,品質契約書に基づき,品質保証要求書を取引先に提示し,品質保証体制の確立を求める。

5.2 下請負契約者の評価
(1) 購買部は下請負契約者(取引先)のリストを作成し,維持,保管する。
(2) 下請負契約者は,定められた標準により2回/年,品質・コスト・納期について評価される。
(3) 新規下請負契約者の選定は,購買部が技術部と協働して,情報収集,調査,評価を行い,決定する。
(4) 品質保証部は最低年に1回,それまでの品質記録の説明を行い,下請負契約者への立入監査を行う。

5.3 購買データ
(1) 技術部は次の文書を制定し,担当課長の承認後,下請負契約者に技術通知をもって発行する。
 ① 購買品の仕様書。
 ② 購買品の図面。
 ③ 購買品の工程要求書。
(2) 品質保証部は,購買品の検査指示書を制定し,担当課長の承認後,下請負契約者に品質保証通知をもって発行する。また必要ある場合には限度見本を発行する。
(3) 上記文書類は社内の文書管理標準の適用を受ける。
(4) 購買部は,品名,数量,納期の記入された注文書を担当課長の承認後,下請負契約者に購買通知をもって発行する。

5.4 購買品の検証
(1) B事業本部のOEM客先または代行者(審査登録機関など)は,契約上,下請負契約者を立入調査することができる。
(2) B事業本部はOEM客先が実施した立入調査の結果を,下請負契約者が効果的な品質管理を行っているかどうかの証拠とはしない。

☆購買要求書発行標準    KBJ 101
 外注契約書標準      KBJ 102
 取引先管理標準      KBJ 103
 取引先評価標準      KBJ 104
 外注品質監査標準     KQM 111
 製品・部品コード管理標準 KTM 104

5.5 購入者による支給品
(1) OEM客先から支給される物品の受取りについては,本社営業部が契約時に文書にて取り交わす。
(2) 生産管理部はOEM客先からの支給品の窓口となり,受取り確認の記録を残す。
(3) 品質保証部は契約に基づいた受入検査を実施し,もし物品に不適合が発見された場合には,不適合記録を作成して生産管理部へ報告する。
(4) 製造部は,製造中に購入者から支給された物品に不適合を発見した場合,次の対応をする。
 ① 契約に定められた不良率以内の場合は,「品質不良票」を添付して,生産管理部へ返品する。
   生産管理部は,客先へ返品して,客先の指示に従う。
 ② 契約に定められた不良率以上の場合は,「工程品質異常連絡票」を発行して,生産管理部へ報告する。
   生産管理部は,本社営業部へ連絡の上,客先と調整する。

☆ OEM客先支給品管理標準 KPC 103
  工程品質管理標準     KPT 101

5.6 購入検査
(1) 品質保証部は購買要求書発行標準(KBJ101)によって外部から購入した物品(部品,サブ組立ユニット,市販品など)の購入検査を部品受入検査標準(KQM107)に基づいて実施する。
(2) 受入検査および試験は,検査実績,下請負契約者工程管理,製造工程品質実績などから判断して無検査に移行できる。この無検査移行への判定は品質保証部が行う。
(3) 外部から購入した物品は,受入検査が終了するまで製造工程には投入しない。
(4) 生産管理部は,緊急に製造するためにやむなく製造部へ物品を投入する場合は,その部品名,コードナンバー,ロットナンバーを明確に記録してから,製造部に物品を移行する。この場合,品質保証部では並行検査を行い,不合格の場合には直ちに回収の手続きをとる。

次回もA社品質マニュアルの続きを示します。
(つづく)