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内部監査の実践(その7)

本シリーズ「内部監査の実践」では、A社のB事業本部のQMSをISO9001:2015に沿って、具体的にどのように監査するかを、実例を中心に説明したいと思います。
その際、内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選2019.11.1」
https://www.technofer.co.jp/iso/mr-qa100-01/)、及び
「ISO 19011に準拠した内部監査に関する質問50選」を随時参考にしていきます。
https://www.technofer.co.jp/iso/hirabayashi-room/

品質マニュアルは従業員全員が知っているべき文書ですが、実際は品質マニュアルを使う場面が来ないと読まないのが現実だと思います。内部監査員も監査の時に品質マニュアルを改めて読むという方が多いと思います。
品質マニュアルは内部監査の基本文書となるもので、内部監査員は事前に必ず読んでおくことが必要です。加えて、品質マニュアルに記載されている標準書を事前に読んでおくことが推奨されます。

A社B事業本部の品質マニュアルの続きです。

【品質マネジメントシステム構成事項】
6 製造
6.1 工程管理
6.1.1 全般
(1) 技術部は,設計図面に基づいて加工図面を制定する。
(2) 製造部は,加工図面に基づき,作業指示書を作成,制定する。この作業指示書には検査規格も含まれる。
(3) 品質保証部は,製造部の制定した作業指示書のなかに含まれている検査規格の制定と認証を行う。
(4) 作業指示書の制定は,作業指示書制定標準(KPT102)に加えて標準書制定標準 (KQM106), 品質関連文書管理標準(KQM 110)に従う。
(5) 技術部は,製造に必要とする機械,設備,計測器,治工具類の仕様を制定し,発注手配をする。
(6) 製造部は,技術部が手配した機械,設備,計測器,治工具類の据付けを実施し,これら機械設備類の日常点検標準を制定する。
(7) 製造部は,工程ごとに定められた加工図面に基づきQC工程表を制定し,工程における品質の作り込みを確実に行う。
(8) 品質保証部は,作業指示書のなかで「限度見本による」と規定されている特性については,出来映え基準としての限度見本を制定する。
(9) 製造部は,量産時における工程異常処理標準(KPT104)と,4M変動管理標準 (KPT105)を制定し,その標準に基づいて工程を管理する。
(10) 工程における最終検査は品質保証部制定の検査規格制定標準(KQM 112)に基づいて実施する。
(11) 完成した製品のロット識別番号などの管理は品質保証部制定のロット管理標準 (KQM 115)に従う。

☆加工図面管理標準    KTM105
 機械設備日常点検標準  KPT103
 作業指示書制定標準   KPT 102
 QC工程表標準       KQM 113
 標準書制定標準     KQM 106
 限度見本制定標準    KQM 114
 品質関連文書管理標準  KQM 110
 工程異常処理標準    KPT 104
 検査規格制定標準    KQM 112
 4M変動管理標準      KPT 105
 機械設備仕様書標準   KTM 106
 ロット管理標準     KQM 115

6.1.2 特殊工程
(1) 技術部は,特殊工程をISO9001 (JIS Z 9901)に述べられている「事後の製品の検査及び試験ではその結果が十分に検証できない,また,例えば製品の欠陥が製品の使用段階においてしか現れないような工程」と定義して,特殊工程管理標準(KTM 107) を制定する。
(2) B事業本部には現在,次の2つの特殊工程が存在する。
 ① メッキ工程。
 ② 溶接工程。
(3) 製造部は,特殊工程の管理を特殊工程管理標準(KTM107)に基づき管理する。
(4) 特殊工程に従事する者は,その工程について特別訓陳を受けており,製造部にはその訓練の記録が保管されている。
(5) 製造部の特殊工程の作業記録は3年間,保管する。

☆ 特殊工程管理標準  KTM 107

6.2 製品の識別及びトレーサビリティ
(1) 製造部は,全製造工程を通じて,過去に製造された製品について製造履歴が追えるようにロット管理標準(KQM 115)にそった識別管理を行う。
 ① 現品の識別
  製造工程中の部品,サブ組立ユニットは,ロットごとに部品名と部品コードをもって識別表示する。
 ② 現品への表示
  標準に定められた主要部品には,ロットナンバー,製造年月日を表示するとともにそれを記録に残す。
 ③ 最終検査上りの製品は,ロットごとに合格品,不合格品の表示をして保管する。
(2) 完成した製品には製品シリアル・ナンバー,製造年月日を表示し,品質問題が発生した場合に,製造工程にまで遡って製造ロットを追えるようトレーサビリティ管理を実施する。
(3) 品質保証部はOEM客先からの契約に基づく識別管理要求がある場合には,管理内容を明確にした標準書を発行する。
(4) 記録の保管:製造部はロット管理標準(KQM115)に基づく記録を3年間,保管する。

☆ ロット管理標準  KQM 115

6.3 工程内の検査及び試験
(1) 製造部は,工程品質管理標準(KPT101)に基づき工程内の検査,試験を実施する。
(2) 製造部は,定められた工程内検査が終了するまで製品を後工程に流動させない。
(3) 工程内で発見された不適合品は,その不良内容を「工程流動票」に明示の上,確実に隔離をし,記録として残す。

☆購買要求書発行標準  KBJ 101
 部品受入検査標準   KQM 107
 工程品質管理標準   KPT 101

6.4 最終検査及び試験

(1) 製造部は,製造工程の最後に位置する完成品検査を“最終検査,試験” と位置付け, 品質保証部制定の製品出荷検査標準(KQM 109)に基づいた全数検査を行う。
(2) 製造部は,最終検査,試験が終了するまで製品を後工程に流動させない。
(3) 最終検査で発見された不適合品は「工程流動票」に明記の上,現品に識別表示をして,隔離する。
(4) 品質保証部は,製造部とは独立して製品の出荷検査を行う。 これは製品出荷検査標準(KQM109)に基づくもので,抜取検査である。
(5) 出荷検査は全ロットを対象とするが,検査実績によって,製造部の実施した最終検査のデータを監査する監査検査へと移行することができる。この決定は品質保証部が行う。
(6) 出荷検査終了後,品質保証担当課長またはその代理者が出荷可否の判定を行う。

次回もA社品質マニュアルの続きを示します。
(つづく)