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ナラティブ内部監査の実践例2 (その9)

ナラティブ内部監査の実践例2として、「困りごと抽出監査」の説明をしています。

最初は、被監査者にとっての困りごとの一般的な例を掲げてみましたが、具体的な事例の方が分かり易いので、その後から、一つひとつ実践に際してのポイントについて話しを進めています。

4.一つひとつ実践に際してのポイント
(6) 指示書通りにやっても良品にならない。

  • 作業指示書通りに仕事をしても期待される成果に結びつかないのは、指示書が不親切なのか、最新化されていないのか、作業する人の力量に問題があるのか、いろいろ要因は考えられます。ここでは指示書内容の規定についてポイントを上げてみたいと思います。
  • ポイント1:作業指示書は理解できる用語を使用する
  • 用語の意味するところが明確でないために混乱を与えることが多い。社会一般に使用されている用語と,組織内で使用されている用語の定義が異なることがある。そればかりか,社会一般に使用されている用語が組織内では全く使用されていなかったり,逆に組織内のみで使用している用語であったり,用語の使用、定義に関しては注意を要する。
  • ポイント2: 具体的に想定できるような記述をする
  • 作業指示書に単に「○○を行う」と書かれていても,実際に誰が,何を,どのように行うのかベテラン以外は理解できない。実践的な作業指示書を作成するためには,5W1Hの表現に工夫するとよい。
    • 箇条書き
    • 一覧表
    • フローチャート
    • 帳票
    • 図表
  • なかでも帳票(フォーマット)、図表などは上手に工夫すると,簡便で確実な作業指示書になるので,検討してみる価値がある。
  • ポイント3: どれくらいの詳細さで書くのか
    • (1)何を記述するか明確にする
    • 作業指示書には,仕事が要求していることを確実に行う,進め方を書く.コンピュータ操作の説明の例でいえば,入力の仕方,出力の仕方,ホルダーの開き方,ファイルの開き方,コピーの仕方,消し方,周辺機器(キーボード,プリンター,フロッピーなど)の操作の仕方などを,「いつ」,「どこで」,「どのよう」に行うのかを記述してあるとよい。
      何が重要な事項なのかを明確にして,重要な事項は作業指示書及び文書から落とさないようにしなければならない。しかし,重要度は経験的に決まることが多いので,作業指示書が成熟していく過程において、時間の経過とともに作業指示書が最新化されていくのがよい。
    • (2)どの程度詳しく記述するかを決める
    • どこまでの細かさで作業指示書を書くのかは極めて重要である。すべてのことをできるだけ詳細に記述するのか,クリティカルポイント(重要致命点)のみを記述するのか,これは作業指示書の性格によって決まる。すなわち,①手順を含めない,②手順を含めるかによって,どの程度の詳細さで記述すべきかが決まってくる。①は人があまり入れ替わらない場合に多く,②は頻繁に入れ替わる場合に多い。
  • ポイント4:作業指示書の見直しを行うこと
  • 業務のやり方が変更になった場合(たとえば,効率化の観点から),責任者の承認のもと作業指示書を改訂する。また,必須な業務が新たに明らかになった場合にも,責任者の承認のもと作業指示書に管理項目を追加する。
  • ポイント5:教育計画
  • 組織の教育には2種類がある。一つは組織で仕事をしていくための一般的な教育です。もう一つは仕事を質、量ともに顧客から評価されるレベルにするための固有技術の教育です。
  • 前者の教育の対象には次のようなものがあります。
    • 組織規程(組織図、就業規則、出退勤管理、品質、安全、環境など)
    • 役割分担
    • 協調性、主導性、チーム活動、創造性、前向きな姿勢、是正力
  • 後者の教育の対象には次のようなものがあります。
    • OJT(On the Job Training): 業務に特化した固有技術教育

(つづく)