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ナラティブ内部監査の実践例2 (その8)

ナラティブ内部監査の実践例2として、「困りごと抽出監査」の説明をしています。

実践例2の最初では、被監査者にとっての困りごとの一般的な例を掲げてみましたが、具体的な事例でないと分かりづらいので、このシリーズではその後から、一つひとつの実践に際してのポイントについて話しを進めています。

4.一つひとつの実践に際してのポイント
(5) 作業指示書が古い。

  • 過去30~40年、日本の製造業は大きな波に翻弄されました。バブルが弾けて不良債権処理に追われた産業界は組織体質の強化には力を入れることが出来ず、工場の海外移転にその活路を見出していきました。労働流動化の波の流れにおいて、組織は作業指示書の最新化という活動を地道に実行しなくなりました。
  • ポイント1: 作業指示書の棚卸
  • 全社にはどのくらいの数の作業指示書があるのか、目録を作る必要があります。今回の悩み事は、自分の行っている作業指示書が古いというものですが、そもそも、どの作業にどんな作業指示書があるのか、全社に渡って一覧表が存在する組織はそう多くはありません。また、作業指示書は場合によっては外注会社など組織の外にも発行されますので、そのような範囲も考慮して、課単位で「作業指示書一覧表」を作成することをお奨めします。
  • ポイント2: 作業指示書の最新化
  • 一覧表が出来たら現状との結び付けをします。すなわち、どの作業に作業指示書が必要かを改めて検討することが必要です。この際、気を付けなければならない項目に次のようなことがあります。
    • 作業移管
      国内各地、海外への工場移転により該当作業が無くなっていないか。
    • 合理化
      作業そのものが技術革新によりもはや存在していなくなっていないか。
    • 作業者
      作業を実施する人が変化していないか。例えば、正社員→派遣社員、外国人労働者、季節労働者、無人(IT化)など。
  • ポイント3: 誰のために作成するか
    作業指示書は業務のやり方を記述ものですが,誰のために作成するのかは重要です。対象者を明確にして使用する方に理解しやすいように作成しなければなりません。

  • <使用者の特定>
  • 誰にフォーカスして作成するのかを明確にする。従業員,外注先、取引先など、使用する人によって作成内容が変わる。次のような点に配慮するとよい。
    • 組織規模
      大企業のように使用する人が多い場合と,中小企業のように少ない場合とでは、記述内容が変わる。使用者人数が少ない場合には内容が限定されてよい。
    • 従業員の定着度合い
      頻繁に従業員が辞めたり,交替したりする職場環境においては、業務の基本は組織に定着しない。したがって、定常的に従業員が交替する場合は,作業指示書の記述は詳細にならざるを得ない。
    • 教育・訓練の度合い
      使用者が職場で教育(OJT)を受けている度合いによって記述内容は変わる。職場訓練(OJT)の効果は大きいので、OJTで組織に定着している基本事項(みんなが当たりまえと思っていること)を作業指示書に記述する必要はない。したがって、作成者は基本事項の何がどこまで組織に定着しているかを知っていることが求められる。

(つづく)