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品質不祥事(その7):品質不祥事の対応-品質を作り込む

品質不正の内容は様々ですが、企業の生産工程(プロセス)から全品良品が得られれば、多くの品質不正は生じないことは自明です。勿論、利益増大のために意図的に不正を行っている事象はここには当てはまりませんので、対象から外します。
現実の生産工程、サービス提供は、作業の動作、設備の加工条件、材料の配合比などの無数のばらつきや変化の要因により、良品をいつまでも継続して作り続けることが困難です。企業は工程(プロセス)で全品良品を作ることを目指すと同時に、出来てしまった不良品の流出を防止し、顧客には100%良品を提供する活動が求められますが、それが適切に実施されていないところが大きな要因として上げられます。

1.品質不正の要因

  • 「品質は工程で作り込む」という原則は、産業界現場で死語となりつつあり、検査に頼る品質保証が多くの組織に見られます。重要な要因には次のようなものがあります。
  • (1) 「プロセス保証」の仕組みが弱い。
  • (2) 業務の標準化がされてないか、弱い。
  • (3) 標準を守る活動が弱い。
  • (4) 品質管理教育が軽視されている。

2.品質軽視の風潮

  • 企業は、工程(プロセス)で全品良品作りを目指す、さらに出来てしまった不適合品は検査で選別し、顧客には100%良品を提供するべきであるにも拘らず、企業内の品質ガバナンスの弱さから不適合品を流出させています。
    社長が率先して「悪い情報を吸い上げる」工夫をしない限り、部下は売上達成を“忖度”して本来取るべき活動を怠ります。そこには、管理層が現場の実態を把握していない、把握していても上位職に報告せずやり過ごしてしまうことが少しずつ横行しています。数年の間それで問題なく過ぎていきますと、不適合品を正規ルールで処理しなくてもよい、という歪んだ慣行が組織内にできてしまいます。
    その要因には、次のようなことがあると考えます。
  • (1) 社長と現場とのコミュニケーションの欠如
  • (2) 現場のリソース(人員、資格者、設備など)不足
  • (3) 育成・教育(法律教育、人材教育、倫理教育)などの手抜き
  • (4) 不都合なことに真正面から向き合わない企業文化
  • (5) 社長のコンプライアンス意識不足
  • (6) 規格外でも使用品質に影響しなければ問題なしという倫理観
  • (7) 企業創立時の理念、ビジョンの変質
  • (8) 企業収益第一主義の蔓延
  • 法律違反問題への対応は、唯一に社長の意識改革と率先行動にあります。社長が品質への重要性を取締役会で言い続けることが大切であり、以下(1)~(8)の対応をとることが望まれます。
  • (1) 社長は、自ら現場へ出向き現場の意見を聴き、実態を知る。
  • (2) 社長は、現場の実態を知ることから現場のリソース(人員、資格者、設備など)不足に手を打つ。
  • (3) 取締役企画室長は、法律教育、人材教育、倫理教育などを計画し実践する。
  • (4) 取締役は、不都合な情報こそ上げろと部下に指示を出す。
  • (5) 社長は、内部通報制度を活用して全社のコンプライアンス状況を把握する。
  • (6) 現場は過剰品質となる規格改定の声(報告)を上げる。規格改定が承認されるまでは規格外品は出荷しない。
  • (7) 社長は、企業創立時の理念、ビジョンを蘇らさせ、必要に応じて修正をする。
  • (8) 社長は、企業収益は品質確保の結果に得られるものであることを徹底する。

(つづく)