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PDCAを回すってどういうこと?

 まず、PDCAとは何か、ということから始めましょう。
 PDCAはそれぞれ、P(Plan)、D(Do)、C(Check)、A(Act)の略です。PDCAサイクルとか場合によってはデミングサイクルという言葉でお聞きになったことがある方もいらっしゃるでしょう。
 戦後アメリカのデミング博士が日本の製造業の復興のために指導に来日し、伝授したのがこのPDCAサイクルの考え方であり、デミング博士の名前をとってデミングサイクルという言い方もされるようになりました。
 このPDCAサイクルがISOマネジメントシステムの中では主要な概念として取り入れられているのです。

 ISO9001では下記の図が0.3.2項にありますし、

 ISO14001でも下記の図が0.4項にあります。

 完全に同じ図ではないのでISO関係者としては皆様に対して申し訳ない気持ちになるのですが、両者共に言いたいことは同じであることを感じ取っていただければ幸いです。
 大事なことは、P、D、C、Aそれぞれが独立したものではなく、つながっているということです。それぞれの図において矢印で示されている部分ということです。そしてAからPにも矢印があることで、このサイクルが連続しているものであることもご理解いただけるでしょう。
PDCAサイクル1周しておしまい、ということではないのです。ある計画を実行し、その結果が妥当なものであったのか、所期の目標に到達するものであったのかどうかの確認そして評価を行い、更にその結果から次に何をつなげることができるのか、改善することができるのか、ということの検討を行い(場合によっては検討に留まらずそこで何か手を打つことまであるでしょう)、次の計画につなげることなのです。
 経営で考えればそのサイクルは1年間ということにもなるでしょうし、一つの製品ということで考えれば、1日が一つのサイクルの単位になるかもしれません。その部分には一切の制約はありません。

 大事なことはつながっている、それもAから次のPにつながっている、ということです。
 そして、そのサイクルの回転スピードができるだけ早いものであればあるほど、組織として活性化が高いレベルにあるといって間違いありません。進んではいるけれど亀の歩み、という状態では決して好ましい経営状態とは言えません。もちろん長い歴史のある大企業と、生まれたばかりのベンチャー企業ではそのスピードの比較をしても意味はありません。考えるべきは、自分たちにとってのそのPDCAサイクルを回すスピードが妥当かどうか、遅くなってはいないか、という視点を常に持ち続けることです。

 それに加えてもう一つの大事な視点をお伝えします。その前に前回の説明時に引用したISO9001/14001規格から引用したPDCAサイクルの図を今一度思い出してください。紙面上で表現するという制約があるため、なかなか 表現は難しいのですが、今回お伝えする視点に関しては、実はISO14001の旧版(2004年版)の方が私は優れた図だと思っています。

 以下の図をご覧ください。


 現在の規格の図との違いをお分かりいただけますでしょうか。
 なかなか2次元で表現するのは難しいのですが、ISO14001の2004年版の表現であれば、PDCAサイクルの中で継続的改善ということが組み込まれていることを感じ取っていただけるのではないでしょうか。

 そうなのです。PDCAサイクルを意識する際に、今の規格の表現は、上から(上方から)から見た際にはその図の通りで問題ないのですが、その図を横から見たときには、同じ場所でぐるぐる回っているのではなく、らせん状にスパイラルアップしていく状況であって欲しいのです。横から見てスパイラルアップしていたとしてもその状態を上から見れば同じところでぐるぐる回っているという状態で問題ありませんよね。なかなか私の筆致力では皆様にお伝えしきれないのですが、皆様の想像力に期待してご理解いただけることを祈念するばかりです。

 ただし、現実の世界では、そう簡単にスパイラルアップできるものではなく、そこには相当に困難が付きまとう可能性もあります。学生時代、勉強やスポーツや習い事などに多くの方が努力を傾けたと思います。そのときのことを思い起こして欲しいのですが、常に努力のしたエネルギー投入量がそのまま結果に反映されましたか。多くの方が「ノー」という言葉をおっしゃると思っています。そうなのです。努力の結果はほとんどの場合、すぐに具現化することはなく、このまま続けても徒労に終わるだけかな、と思った矢先に、いきなりぐんと成長した、というように結果が出る、ということが往々にして起きるものなのです。似たようなご経験をされた方もきっと多いのではないでしょうか。

 従って、PDCAサイクルを回していく際にも、結果が常に出ていなくてはダメだ、と思う必要は一切ありません。結果は階段状(段々畑のようにという理解でもOKです)であって全く問題ありません。成長の間には必ず踊り場があるものです。ただし、意識だけは常に向上を目指す、そのことだけは忘れずにいてください。その意識と努力の継続がなければ階段状であっても結果(パフォーマンス)の向上も有り得ません。この関係性の理解は是非お間違いのないようによろしくお願いします。