ISO情報

ISOの審査会社ってたくさんあるの?どうやって選ぶの?

 ISOの認証を取得したいと組織の方が考えた場合、まず検討していかなければならないことはどの規格で認証を取るのかという点です。取引先からの要求の場合などであれば認証を取得すべき規格が指定されているでしょうから悩む必要はないはずです。一方、自主的に取り組む場合はこの検討からスタートすることになり、その上で次の段階の検討として、どの審査会社を選ぶかということに進んでいくはずです。

 審査をする会社のことは通称、審査機関あるいは認証機関と呼びます。
日本国内で活動している審査機関の数は、筆者も正確にはつかんでおりません(ご容赦ください)。ですが現在活動している審査機関の数は60社とも70社とも言われており、非常に多くの会社がISOの審査業務を行っていることは間違いありません。ISO規格発祥の地とも言えるイギリスでは100社を超える審査機関が存在する、と聞いたことがあります。

 さあ、ではそれだけたくさんある審査機関の中でどの組織を選べばよいか。
これはとても悩むことになると思います。知り合いの方の会社が認証を取得していれば、どの審査機関を使っているのか、そしてその内容はどうかということを教えてもらうこともできるでしょう。ですが、ISOの審査機関とのお付き合いは、ほぼどの組織でも1社としかありません。場合によっては、ISO 9001ではA審査機関、ISO 14001ではB審査機関と使い分けている組織もありますが、それはあくまで例外的なお話です。こちらのケースもまだ少数派ですが、ある程度認証を取得して年数が経つと審査機関を変更する、という組織も出て来ます。とは言え、そのような会社の方であってもせいぜい取引をした審査機関は2社あるいは多くても3社というのが実態です。なかなか一般のものを購入する際のように複数のものを見比べるということが難しいのが審査機関選びのネックの一つになるでしょう。

 さて、では実際に審査機関を探すとなると、幾つかのチェックポイントがあります。以下に列記しますと、

a.認定機関から認定されている審査機関か?
b.どの認定機関から認定されている審査機関か?
c.審査機関の認証範囲が自社業務とあっているか

 この3点は必ず確認して欲しい項目になります。とは言え、日本で一番プレゼンスのある認定機関は公益財団法人日本適合性認定協会であり、その認定を取得している審査機関から選ぶというやり方で始めれば、上記項目ではc項だけを意識すればよいことになります。
 認定機関に関しては、「ISOマネジメントシステムの認証制度って何?」のところで説明をしております。認定機関って何だったかな?と思われた方はそちらをご覧ください。

 そして次のポイントになってくるのがより実質的な検討項目です。

d.どのようなポリシーで審査を行う審査機関か?
e.どのような審査員(経験分野、そして経験年数)がいるか?
f.料金は?
g.付帯サービスは?

という項目について確認していくことになります。

前回、審査機関を選ぶポイントを7つほど整理しました。再掲しておきます。

a.認定機関から認定されている審査機関か?
b.どの認定機関から認定されている審査機関か?
c.審査機関の認証範囲が自社業務とあっているか
d.どのようなポリシーで審査を行う審査機関か?
e.どのような審査員(経験分野、そして経験年数)がいるか?
f.料金は?
g.付帯サービスは?

さて、今回はもう少し踏み込んでお話をしていきますね。

JAB(公益財団法人日本適合性認定協会)から認定を取得して活動を行っている審査機関は2019年1月現在40社あります。

詳細は下記URLからご確認ください。
https://www.jab.or.jp/news/2019/0124.html

このサイトを見ると、それぞれの審査機関がどの規格に関して審査業務を行っているかが読み取れます。そして各機関の詳細情報に入っていくと、認定範囲として表示されている箇所があります。
少々専門的な話に入っていきますが、この認定分野は現在39の分類に分けられています。

1が農業、林業、漁業、
2が鉱業、採石業、
3が食料品、飲料、タバコ、
4が織物、繊維製品というような分け方です。

これが39まで分けられていますので、自社業務に合致する審査機関をこの分類の中から選んでいく必要があります。自社がどの分類に入るのかわからなければそこから審査機関に問い合わせをしていくことになります。
昔と違って、審査機関同士の営業競争も激しいので、一度問い合わせをしてしまうとそこと取引しなければいけないのでは、などと心配することなく気軽に問い合わせをしてみてください。

39分類がどのようになっているかを自分で見たい、という方のために参照先を記しておきます。公益財団法人日本適合性認定協会のサイト内の文書「QMS 及びEMS 認定範囲のためのIAF 参考文書」の附属書に記載されています。
https://www.jab.or.jp/files/items/common/File/IAFID12014.pdf

そして先ほど認定機関はJABを前提に話をしましたが、JAB以外でもUKAS(英国)、RvA(オランダ)、JAS/ANZ(オーストラリア・ニュージーランド)などの認定機関から認定を受け、日本で審査活動をしている審査機関もあります。複数の認定機関から認定を取得しているところもあれば、外国系の認定機関から認定を取得した機関が、日本で現地法人を作って審査活動を行っているケース(いわゆる外資系の審査機関です)もあります。
特に海外の取引先にアピールが必要な場合には、認証機関ではなく、認定機関がどこかということの確認が必要な場合もあるかもしれません。ご注意ください。

更にもう一つ。筆者自身はあまり認知できていないのですが、認定機関から(日本のJAB或いは外資系問わず)認定を受けずにISOの審査活動をしている機関が理論上は存在し得る、という点への理解をしておいて頂きたいのです。

いわゆるプライベート認証と呼ばれるものです。
お客様がそれでもよい、ということであれば、どの認定機関からも認定を受けずにISOの審査業務を行うことを規制することはできません。しかし国際的な審査登録の枠組みからは外れるものですのでご注意ください。

今回がいよいよ核心です。
ある特定の認定機関から認定を得ている認証機関といっても、よほど特殊な業務をしている組織でない限り、選ぶべき対象となる審査機関は多数あるのが実際のところです。
時間的余裕があるなら、5社でも10社でもそれらの全ての審査機関にコンタクトをとって営業方針、審査方針等についてのプレゼンをしてもらうのが良いわけですが、現実的にそれは不可能ですね。

では、どのような視点で選ぶのが良いのか。
一番のポイントは、皆さんの組織が認証を取得する目的を明確にすることです。審査に通った後もらうことができる認証証(合格証のことです)の価値は基本的には差がありません。どこどこの審査機関の認証証があるとビジネスチャンスが広がる、などという状況になれば全く話は変わってきますが、将来のことはわからないものの、現時点ではそのような差はありません。対外的なアピールの価値は変わらないとすると、捉えるべき価値のポイントは対内的価値ということになります。

具体的には、お金と時間をかけて審査を受けるわけですので、それに見合うリターン、メリットが自社にもたらされるかどうかです。
認証審査は点数で評価されるものはありません。あくまで基準に対して適合していることの評価判定です。ただ単にその評価判定をしてもらい、認証証が欲しい、ということだけならば、どの審査機関でも問題ありませんし、極論を言えば、料金の安い審査機関の方が良い、ということになるでしょう。

しかしながら、それでは審査の本質、認証取得の本質からはだいぶかけ離れてしまいます。認証を取得するイコール、社内体制をきちんと組み上げて、組織としての永続性も高め、更にその上で、品質面や環境面で自社の価値を高めることにつなげてこそ、取組み価値がある、というものです。
そしてそのことをしっかり審査で見てくれる審査機関、そして審査員こそが組織が求めるべき相手なのです。
そうなると、しっかりとした審査方針を持っている審査機関、しっかりと審査員教育を行っている審査機関でなければ対応できません。必然的にコストもかかってくるわけです。私どもに入ってくる情報では、現在審査料金の差が、料金の高い審査機関と安い審査機関では3倍程度の開きが出ています。信じがたい価格差ですが、これが現実の世界です。どこが適正価格のレベルかということの判断が非常に難しくなっていると言わざるを得ませんが、価格に見合う価値があるかどうかをしっかり見て選定して欲しいのです。安物買いの銭失いにならないよう、間違っても安いからこの審査機関にしよう、と内容を確認することなしに審査機関を選ぶことだけは避けてください。
ただし補足をしておきますが、料金が高いから良い審査、料金が安いから悪い審査とは必ずしも言えないケースも聞き及んでいます。普段の買い物をするときでも同じではないでしょうか。デパートだからすごく満足いく買い物ができ、ディスカウントストアではろくな買い物ができない、というようには私たちの日常生活はなっているわけではありませんね。それと同じことが審査ビジネスにおいてもあると思ってください。

繰り返しになりますが、何よりも大事なことは審査を受ける、認証取得をすることによって、自社の未来をどのように創り出していくか、という組織自身の目的意識こそが何よりも大事なことなのです。その目的達成のために組織の進む方向を理解し、その過程をしっかり審査員が見てくれるかどうかが審査機関を選ぶ際の大事なポイントです。