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ISO9001内部監査の仕方(第17回)

平林良人「ISO9001内部監査の仕方」アーカイブ 第17回

これは1994年に日科技連出版社から出版されたものです。以下は本書の趣旨です。
「第三者である審査登録機関が,6カ月おきに,審査登録した会社(組織)に対して立入調査をするのが代表的なフォローアップの仕組みであり,サーベイランスと呼称されている。審査登録を済ませた会社は,この仕組みによって半ば強制的に,確立した品質システムを見直しさせられる。しかし,外部からの圧力によって品質システムの見直しを実施するというのは,ISO 9000/JIS Z 9900シリーズ規格の本来の考え方ではない。ISO 9001 / JIS Z 9901規格の条項中に次の規定要求事項がある。
『「4.1.3 マネジメント・レビュー(経営者による見直し):執行責任をもつ供給側の経営者は,この規格の要求事項及び供給者が定めた品質方針及び品質目標を満足するために,品質システムが引き続き適切,かつ,効果的に運営されることを確実にするのに十分な,あらかじめ定められた間隔で品質システムの見直しを行うこと。この見直しの記録は,保管すること。』
このことを経営者は肝に銘じて内部監査を自分の代行として行うことを組織内に徹底することが肝要である。」


規格の要件 : 4.1 経営者の責任
チェック項目 
4.1.1 品質方針
No.1 社長が,品質方針,品質目標,責務を定めているか。
No.2 品質方針は目標及び顧客の期待・ニーズに対応しているか。
No.3 品質方針が年度方針等に展開されているか。
No.4 品質方針を従業員全員に理解させる手段が決まっているか。
No.5 理解させる手段が実行,維持されているか。
No.6 全員が品質方針(品質目標)の概要を説明できるか。

4.1.2 組織
4.1.2.1 責任及び権限
No.1 品質に関する業務の分課分掌標準があり,業務内容,責任,権限およびその相互関係が明確になっているか。
No.2 出荷停止,ラインストップ,購入部品使用停止などの権限が明確になっているか。
No.3 設計変更,技術変更,検査規格変更,作業標準の変更などを実施する責任部門が 定められているか。
No.4 品質問題(市場クレーム,工程異常,校正異常など)を処置する責任部門を定め
ているか。
No.5 品質保証体系図があり,ステップごとに部門別の品質保証に関する責任が明確に定められているか。
No.6 重要度により,品質問題を登録し,その記録を残しているか。
(原因調査~効果の確認)  

規格の要件 : 4.1 経営者の責任
チェック項目
No.1 管理者の定義,資格要件が明確になっているか。
NO.2 業務の実行について従業員に適切な訓練を計画実施しているか(4.18項“教育・訓練”)
NO.3 内部品質監査員の資格要件が明確になっているか。
NO.4 内部品質監査員は必要な訓練を受けているか。
NO.5 検証活動には次の内容が含まれているか。

  • ① 製品の検査,試験
  • ② 設計審査
  • ③ 品質システム,工程,製品監査

NO.6 5項の検証活動にあたる人は必要な訓練を受けているか。

4.1.2.3 管理責任者
No.1 権限,責任をもって品質システムの管理を行う管理責任者を選出しているか。
NO.2 責任者は品質システムの管理を行っているか(見直し,改善など)。
4.1.3 マネジメント・レビュー(経営者による見直し)
No.1 経営者は,あらかじめ定められた間隔で品質システムの見直しを行っているか。
No.2 経営者の見直しによる記録は保管されているか。
NO.3 内部品質監査の評価結果を含めて見直しをしているか。

規格の要件 : 4.2 品質システム
チェック項目
4.2.1 一般
No.1 品質システムの文書化の体系が決められ,そのとおりに実施されているか。
No.2 品質マニュアルには規格の要求事項がすべてカバーされているか(定められているか)。
No.3 同左。

4.2.2 品質システムの手順
No.1 品質マニュアル及びその下位標準は文書管理の手順に従って管理され,最新版となっているか。
No.2 文書化された事項は効果的に実行されているか。

4.2.3 品質計画
No.1 品質計画書を作成する方法が定められ,作成されているか。
No.2 所定の品質を得るための管理手段,工程,検査装置,取付具,全製造資源,技能を確認し,調達しているか。
No.3 設計,製造工程,据付け,検査および試験の手順ならびに関連文書に矛盾はないか。
No.4 新たな計測手段の開発を含む検査,測定,試験の技法を必要に応じて更新しているか。
No.5 現在の技術水準を超えた能力を必要とする測定に関する要求事項を明確にしているか。
No.6 検証活動として,①製品の検査,試験,②設計審査,③品質システム,工程,製品の監査の手順が明確になっているか。
No.7 主観的評価要素を含め,必要なすべての特性の受入れ基準を明確にしているか。
No.8 品質記録は明確になっているか。また,その作成,保管の状態はどうか。

規格の要件 : 契約内容の確認
チェック項目
4.3.1 一般
No.1 受注の窓口,情報の伝達ルート,決裁部門,問題を含んだ受注時の処置検討方法,注文書,会議録などが基準に記述されているか。
No.2 基準に従って,窓口から情報が伝達され,決裁部門で受注の決定がなされているか。
No.3 受注に際し,事前に客先に確認する事項(要求仕様,数量,納期など)が基準に記述されているか。
No.4 事前に確認しておく事項がリストアップされ,予定された項目のすべてが確認されているか。
No.5 受注に際し,内部で受注の可否を決定する手順,使用する資料の種類,内容,検討会議の開催方法などが,基準に記述されているか。
No.6 資料を基に,定められた手順に従って受注が可能であるか。内部で契約要件を満たす能力の検討を実施しているか。

4.3.2 内容の確認
No.1 口頭で注文を受けた場合にその内容が文書化されているか。
No.2 問題を含んだ受注の場合,基準通りに問題の検討が実施されており,すべて解決されていること。

4.3.3 契約内容の修正
No.1  契約内容の修正の仕方と関係部門への伝達の仕方が決められており,そのとおりに実施されているか。

4.3.4 記録
契約内容を確認した記録が残っているか。

規格の要件: 4.4 設計管理
チェック項目
4.4.1 一般
No.1 製品の計画~設計~確認までの業務ステップ,設計の進め方が基準に記述されているか(設計のステップ,関係部門,実施事項など)。
No.2 製品の計画~設計~確認が定められた通りに行われているか。

4.4.2 設計及び開発の計画
No.1 設計の大日程計画,計画変更の方法,計画内容,責任部門,関係部門が基準に記述されているか。
No.2 設計の大日程計画が作成され,日程,責任分担などが明確になり,徹底されているか。
No.3 大日程計画の進捗が把握され,設計の進展に応じ,大日程計画の修正,徹底がなされているか。
No.4 設計業務は,設計担当の長により,職務等級格付け基準によって割り当てられているか。
No.5 設計を確認するための各試作品評価試験,設計審査などが,項目として,大日程計画のなかに入っているか。
No.6 各試作品評価試験は,担当する部署の長により,職務等級格付け基準によって割り当てられているか。
No.7 大日程計画は設計の進展に応じて更新されている。

4.4.3 組織上及び技術上の相互関連
No.1 関係部門と情報のやりとりをする会議などの種類,開催時期,開催責任部署,関係部署,情報内容,情報を見直す方法,情報修正の徹底方法などが基準に記述されているか。
No.2 基準に定められた通りに会議などが行われ,必要なときに関係する部門に必要な情報が伝わっているか。
No.3 必要な情報は文書化して伝達しているか。また,その情報は定期的に見直しをしているか。

規格の要件 :4.4 設計管理
チェック項目
4.4.4 設計へのインプット
No.1 製品の設計の基礎となる仕様書(市場の状況),お客様の要求事項,安全関係の法律,製造能力などの情報,情報の把握方法,インプット事項作成の責任部門,承認方法,徹底会議などの方法などが基準に記述されているか。
No.2 責任部門は,設計にインプットすべき情報を確実に把握し,文書化しているか。
No.3 不完全,不明確な事項については詳細情報を集めるなどにより,明確にしているか。

4.4.5 設計からのアウトプット
No.1 設計のアウトプット(図面,計算書,試作品など)は,文書化されているか。また,その保管方法,管理方法を明確にした基準があるか。
No.2 基準通りにアウトプットは文書化され,保管,管理がなされているか。
No.3 設計のアウトプットなどで製品の安全性,致命的な部分を明確にしているか。
No.4 安全性,致命的な部分については,試作品の評価計画,設計審査,(DR)の項目に入れているか。品質確認をしているか。

4.4.6 デザイン・レビュー(設計審査)
No.1 設計審査が大日程計画にそって実施されているか。
No.2 設計審査に参加するメンバーは決められており,その中には設計段階で関係するすべての部門の代表者が含まれているか。
No.3 設計のインプットとアウトプットの適合が審査され,実施記録が残されているか。

規格の要件 : 4.4 設計管理
チェック項目
4.4.7 設計検証
No.1 設計検証として,設計のインプットとアウトプットが合致しているか確認する方法(試作評価,検図など),確認内容(法規性,安全性,重要な特性,誤差,公差な  ど),確認する段階,計画の立て方,サンプル数の決め方(安全に関する事項は多く,厳しく),サンプル数などが基準に記述されているか。
No.2 基準の通りに各段階の確認計画が作成され,設計の検証が実施されているか。
No.3 設計検証として次のことが実施されているか。

  • ① 別法による計算
  • ② 従来の設計との比較評価
  • ③ 試験の実施
  • ④ 設計図面,他の文書の発行前確認

4.4.8 設計の妥当性確認
No.1 設計の妥当性確認の実施の仕方が文書化されており,記述されたとおりに実行されている。
No.2 設計の妥当性確認の結果が記録にとられ,保管されているか。

4.4.9 設計変更
No.1 設計変更書類の作成,承認方法,変更確認,確認関係部署,情報伝達方法,伝達先,旧図の廃棄方法などが基準に記述されているか。
No.2 設計変更する理由が明確にされ,責任部門,関係部門で検討された後に変更されているか。
No.3 基準に従い,設計変更が実施され,徹底しているか。

規格の要件 : 4.5 文書及びデータの管理
チェック項目
4.5.1 一般
No.1 基準・標準の作成,承認(責任者),制定,登録,配布,保管などの方法が,基準に記述されているか。
No.2 基準に定められた方法に従って,作成,承認,配布,保管などが実施されているか。

4.5.2 文書及びデータの承認及び発行
No.1 基準・標準は発行する前に上司が確認・承認をしているか。
No.2 文書管理を実施するために,文書の台帳を作成し,文書の最新版を明確にしているか。
No.3 基準・標準ごとに,発行の期日,配布場所が文書に定められているか。
No.4 基準・標準は,定められた期日に,必要な文書が,必要な場所に,配布されているか。
No.5 基準・標準などについて,廃止された文書を使用の場から回収し,識別する方法が基準に定められているか。
No.6 廃止された古い基準・標準などは,使用の場から確実に回収されているか。

4.5.3 文書及びデータの変更
No.1 文書を変更(改訂)する場合の情報の収集,作成,改訂履歴の記入方法,承認(責任者),既存物の回収,登録,台帳管理,配布方法,保管の方法が基準に記述されているか。
No.2 変更文書は,定められた方法で配布,既存物の回収などが実施されており,改訂前の文書との誤使用はないか。
No.3 文書の変更は,その文書を最初に発行したのと同じ部門,またはグループが実施しているか。
No.4 変更(改訂)する場合の裏付け情報の収集,作成,承認(責任者),関係部門の承認を定めた基準があるか。
No.5 変更する目的,内容,場所,履歴などが明確に記入され,変更する内容,履歴が明確にわかるようになっているか。
No.6 基準・標準などの文書は台帳管理されており,最新版の文書が一目でわかるようになっているか。
No.7 変更によって読みにくくなったり,読めなくなったなどの基準・標準類などはないか。