ISO情報

ISO9001内部監査の仕方(第18回)

平林良人「ISO9001内部監査の仕方」アーカイブ 第18回

これは1994年に日科技連出版社から出版されたものです。以下は本書の趣旨です。
「第三者である審査登録機関が,6カ月おきに,審査登録した会社(組織)に対して立入調査をするのが代表的なフォローアップの仕組みであり,サーベイランスと呼称されている。審査登録を済ませた会社は,この仕組みによって半ば強制的に,確立した品質システムを見直しさせられる。しかし,外部からの圧力によって品質システムの見直しを実施するというのは,ISO 9000/JIS Z 9900シリーズ規格の本来の考え方ではない。ISO 9001 / JIS Z 9901規格の条項中に次の規定要求事項がある。
『「4.1.3 マネジメント・レビュー(経営者による見直し):執行責任をもつ供給側の経営者は,この規格の要求事項及び供給者が定めた品質方針及び品質目標を満足するために,品質システムが引き続き適切,かつ,効果的に運営されることを確実にするのに十分な,あらかじめ定められた間隔で品質システムの見直しを行うこと。この見直しの記録は,保管すること。』
このことを経営者は肝に銘じて内部監査を自分の代行として行うことを組織内に徹底することが肝要である。」


規格の要件 : 購買
チェック項目
4.6.1 一般
No.1 購買品に関する規定要求事項が文書化され,実行に移されているか。

4.6.2 下請負契約者の評価
No.1 会社で活用している外部の業者(購買,加工,組立,校正,輸送,製造,設備,計測器などで仕事が外に出ているもの全部が対象)を評価する方法(経営状況の評価,品質システムの評価,サンプルの試験,過去の履歴調査など)が基準に記述されているか。
No.2 基準に従い取引業者を評価し,報告書が作成されているか。
No.3 取引業者を選定するにあたり,検討資料,関係部門,選定の責任部門,選定方法などを定めた基準が作成されているか。
No.4 基準で定められた通りに,調査結果などの資料を基に関係部門などで検討し,その結果によって外部の業者を活用しているか。
No.5 選定時の検討結果が記録として残っているか。
No.6 選定後,製品の重要度,評価結果,担当する仕事などにより取引業者を活用するにあたって,今後の管理方法(作業実習,技術指導,QAシステム監査=診断,工程監査など)が基準に記述されているか。
No.7 選定時の条件や依頼する製品の重要度に応じて,取引業者ごとに管理方法が選択されているか。
No.8 取引業者ごとに選択した管理方法の具体的な基準に従って,QAシステム監査=診断などが実施され,その記録が残っているか。

4.6.3 購買データ
No.1 取引業者に提出する仕様書,検査規格,品質保証基準書,標準書,注文書,契約上の条件など,提出する書類の種類が基準に記述されているか。
No.2 取引業者に提出する書類を審査する方法,関係部門,提出する窓口,提出する時期などが基準に記述されているか。
No.3 提出書類が関係部門などで審査され,定められた時期に窓口から取引業者への提出されているか。
No.4 提出された書類(特に図面などの標準が重要)の変更時の徹底,古い物の回収,責任部門などが基準に記述されているか。
No.5 基準通りの内容が提出書類に確実に記入されているか。
No.6 基準の通りに変更が実施・徹底されているか(記録がある)。
No.7 取引業者の都合による工程の変更,品質異常発生時などの取引業者からの報告,申請を受ける事項,および報告・申請を受けた場合に内部で対応する方法が基準に記述されているか。
No.8 報告・申請事項の受理を基準通りに実施し,内部で検討後,処理しているか。

4.6.4 購買品の検証
4.6.4.1 下請負契約者先における供給者による検証
No.1 下請負契約者先において購買品を検証する方法,手順,出荷許可の方法が定められているか。
No.2 下請負契約者先において決められたとおりの検査を実施しているか。
No.3 検証の方法,手順,出荷許可方法が購買文書に規定されているか。

4.6.4.2 下請負契約された製品の顧客による検証
No.1 契約に定められている場合,客先が取引業者に立ち入ることができるようになっているか。

規格の要件 : 4.7 顧客支給品管理
チェック項目
(受入れ)
No.1 OEM先,客先より支給された製品(材料,部品,パレットなど)を受け入れる方法(受入確認など)について定めた基準があるか。
No.2 基準に従い,支給される製品を受入確認などで品質,数量を確認し,その記録を残しているか。
(識別・保管)
No.1 支給された製品を識別,保管する方法を定めた基準があるか。
No.2 基準に従い,識別,保管などを実施しているか。
(不適合品)
No.1 欠品,損傷,品質が悪いなどで使用できない支給品については,記録し,供給者に報告する方法を定めた基準があるか。
No.2 欠品,損傷,品質が悪いなどが発生した場合は,基準に従い,購入者に報告し,記録に残しているか。

規格の要件 : 製品の識別及びトレーサビリティー
チェック項目
(ロット履歴)
No.1 全工程を通して完成製品,半完成品,購入部品・材料などのロットの大きさ,識別,表示方法などを明確に定めた基準があるか。
No.2 基準に従ってロットの区別などがなされているか。
No.3 全工程を通じて製品の製造に使われた部品・材料,加工条件などについて,記録内容,対象範囲,残し方の方法を定めた基準があるか。
NO.4 記録の対象範囲,残す方法を定めた基準に従って,記録を残しているか。
NO.5 製造番号,製造月,ロットナンバーなどを製品に表示し,市場(社内)で品質問題が発生した場合に製品に使用した部品・材料,加工条件などがすぐわかるように,識別,記録の保管,履歴の追い方などを定めた基準があるか。
No.6 過去に作られた製品について,製造番号,製造月などから履歴が追えるか(品質問題が発生しても製造ロットが限定できる)。
(ユーザーからの要求)
No.1 ユーザーの指定要求事項にロット履歴の項目がある場合は,契約時にどの段階までロット履歴が要求されているか確認し,内部対応,ユーザーとの調整などを実施しているか。
No.2 その実施の内容は標準化され,文書化されているか。また、記録に残されているか。

規格の要件 : 4.9 工程管理
チェック項目
(標準)
No.1 工程管理に必要となる図面,工程フローチャート,作業指示書,QC工程表,品質計画書などの種類,発行部門,配布部門などの体系・一覧を定めた基準があるか。
No.2 図面,工程フローチャート,作業指示書,QC工程表,品質計画書などの標準類が,基準に定められた通り,作成,承認,登録,発行,配布,変更されているか。
No.3 基準通りに差し替え,回収,変更がなされており,各現場では最新の標準となっているか。
No.4 標準は使用する人が十分理解できるように詳細,丁寧,わかりやすく書かれているか。
(標準の遵守)
No.1 変更,緊急,例外作業などの発生した場合は,責任者から,作業者,関係者に重要事項,ポイントが説明されているか。
No.2 全作業者は作業標準などを遵守しており,作業指示通りに作業が行われているか。
(設備)
No.1 設備(新規・増設,治工具などを含む)について必要となる精度,製造能力などの評価の方法,評価時期,関係部門,責任部門,承認方法,メーカーとの調整などの方法が基準に記述されているか。
No.2 設備について基準通りに評価が行われ,期待される能力の設備が設置されているか。
No.3 設備の日常点検方法,定期点検方法,異常時の処置方法などの管理事項を定めた基準があるか。
No.4 基準に従って,設備の日常点検,定期点検が行われているか。
(環境)
No.1 工程の環境(温度,湿度,防塵,静電気除去方法など)の条件,維持方法,確認方法,異常時の処置などを定めた基準があるか。
No.2 維持方法,確認方法,異常時の処置が定められた通りに行われ,環境が維持されているか(記録が残っている)。

規格の要件 : 4.9 工程管理
(監視・管理)
No.1 製品の特性などから工程の管理方法(監視方法,管理する重要工程,特性の決定,確認方法,異常時の処置方法など)を決鍵る基準があるか(QC工程表などの作成)。
No.2 重要工程,特性,具体的な規格,確認方法,頻度数がQC工程表,作業標準などに明記されているか。
No.3 定められた方法,頻度に従い,監視・管理,確認されているか(記録が残っている)。
(承認)
No.1 工程および設備を承認する方法(資料,責任部門,関係部門など)を定めた基準があるか。
No.2 基準に基づき工程および設備が承認されているか(記録が残っている)。
No.3 新規工程が承認されるまでのあいだの製品流動方法(データのとり方,確認方法など,責任部門,品物の保管方法など)を定めた基準があるか。
No.4 新規工程が承認されるまでのあいだに製造された製品は管理され,出荷されていないか。
(できばえの基準)
No.1 官能特性などで良・否の限度見本を発行する場合の作成,承認,有効期限,識別,表示,回収,改訂,保管方法,使用方法などが基準に記述されているか。
No.2 限度見本の制定,改訂,回収,保管,使用などが,基準通りに行われているか。
(特殊工程)
No.1 工程のなかでメッキ,溶接,半田付け,熱処理など,次の工程で品質確認できない工程を特殊工程とし,認定,明確化,記録の保管,管理方法の決め方などの特別な管理を指示する方法が基準に記述されているか。
No.2 基準通りに,QC工程表,作業標準などにより特殊工程が明確にされ,工程に明示されているか。
No.3 QC工程表,作業標準などにより,管理する特性,方法,頻度が具体的に定められているか。
No.4 定められた通りに管理が行われ,その記録(時間,温度,圧力,周囲環境など)が残されているか。
No.5 特殊工程に従事する作業員について,必要な教育を実施しているか。
No.6 特殊工程に従事する作業員についての教育,資格の記録が残っているか。

規格の要件 : 4.10 検査・試験
チェック項目
4.10.1 一般
No.1 検査・試験業務の手順が文書に定められ,そのとおりに実施されているか。

4.10.2 購入検査・試験
4.10.2.1
No.1 購入検査(受入検査)における移行検査方法,監査方法,データ確認方法,重要部品決定方法,要注意メーカーのフォロー方法などが基準に記入されているか。
No.2 基準通りに受入検査が実施されているか。
No.3 受入検査・試験規格を,作成,承認,制定,登録,配布,回収,差し替えする方法,時期が基準に記入されているか。
No.4 基準に従い,受入検査・試験の規格が作成,制定,改廃されているか。
NO.5 基準通りに受入品が流れており,合格品以外は受け入れていないか。

4.10.2.2
No.1 購入検査の実施にあたっての試料の数の決定には,その取引先のこれまでの業績が考慮されているか。

4.10.2.3
No.1 緊急を要する場合,受入検査・試験のまえに製造に投入されるが,識別し,記録を残し,不合格時には回収,交換が行われるようになっているか。

4.10.3 工程内の検査・試験
No.1 工程内検査・試験方法(データ,サンプリング,重要工程,部品の重要度など)などの方法(何を基に,いつ,責任部門など)が基準に記入されているか。
No.2 工程内検査・試験規格を作成,承認,制定,登録,配布,回収,差し替えする方法,時期が基準に記入されているか。
No.3 基準に従い,工程内検査・試験の規格が作成,制定,改廃などされているか。
No.4 工程内検査・試験規格を遵守した検査・試験が実施され,流動表などに記録が残されているか。
No.5 工程内検査における合格・不合格時の処置,合格印,緊急時の流動方法,識別などが基準に記入されているか。
NO.6 基準通りに製品が流れており,合格品以外は次工程に流していないか。
No.7 不適合品については,基準通り識別,処置(廃棄,再加工など)がなされているか。
No.8 緊急を要する場合,工程内検査・試験のまえに次工程に投入されるが,識別し,記録を残し,不合格時には回収,交換が実施されるようになっているか。

4.10.4 最終検査・試験
No.1 最終検査および試験,出荷検査などの実施方法(時期,責任部門など)が基準に記入されているか。
No.2 最終検査,試験,出荷検査の規格を作成,承認,制定,登録,配布,回収,差し替えする方法,時期が基準に記入されているか。
No.3 基準に従い,最終検査,試験の規格が作成,制定,改廃などされているか。
No.4 最終検査,試験の規格を遵守した検査,試験が実施され,その記録が残されているか。
No.5 最終検査における合格・不合格時の処置,合格印,識別などの取扱方法が基準に記入されているか。
No.6 基準通りに最終品が流れており,合格品以外は出荷していないか。

4.10.5 検査・試験の記録
No.1 最終検査に合格している記録(帳票,承認,責任者,保管方法,保管期限など)を残す方法が基準に記入されているか。
No.2 基準に従って,記録を残しているか。
No.3 出荷に責任をもつ検査責任者が明確になっているか。

規格の要件 : 4.11 検査,測定及び試験装置の管理
チェック項目
4.11.1 一般
No.1 検査・測定・試験装置(ハード,ソフト)の管理,校正,維持などの測定管理全体の管理体系を定めた基準があるか。
No.2 基準に定められた通りに測定器などの管理体系が運用されているか。
(治具・取付具・型・ソフトウェアなど)
No.1 治具,取付具,型,ソフトウェアなどについて,製品の検査をする能力があるか。
No.2 作業前に点検する方法,異常時の処置などを明確にした基準があるか。
No.3 使用前に点検が実施され,その記録が残っているか。
No.4 治具,取付具,型,ソフトウェアなどについて定期に点検する頻度,点検範囲などの方法が基準に記述されているか。
No.5  定期点検が実施され,結果の記録が残っているか。