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品質不祥事(その11):あるべき組織像

昨今の品質不祥事を分析すると、日本は70年に渡って企業が長く大切にしてきたいろいろなものを喪失してしまっているのではないかと危惧します。
企業は土台、柱、屋根そして鉄骨からなる家に例えることができます。企業における土台とは、創業の精神/法/倫理などであり、その根幹は企業が存在している限り変えてはならないものです。柱は製品を実現化する際に必要となる企業総ての日常業務(人、製品開発、技術、設備及びマーケティングなど)であり、屋根はトップマネジメントです。
日常業務とトップマネジメントは企業の経営環境の変化にともない変わるものです。環境に対して常に変化しつづけなければ企業自体は存続できません。変えてはならない土台と、変えなければならない柱、屋根を結ぶものが鉄骨であり、鉄骨は企業でいうと下記の5項目ということになります。

  • 経営理念、ビジョン
  • 経営者と管理者の気概
  • 非属人的企業
  • 報告する文化
  • 危機感

企業は通常継続的に存続することをめざして活動しています。しかし、経済的に自立できなければ社会的に存在を許されません。企業は常に厳しい競争に晒されています。企業の栄枯盛衰は、20世紀に完成した自由経済社会では、一見企業の製品競争力で決定されると思われますが、それだけで決まるものではありません。製品競争力に加えて企業の社会受容性の要素が論じられなければなりません。ある程度経済基盤ができてくる(周りに認められるようになる)と営利追求だけでは社会はその存在を認めません。

社会に受け入られる要素には、順法性、環境保全性、社会貢献性などがありますが、優先度からいうとまずは順法性が第1の社会受容性の要素であると思います。また、環境保全性、社会貢献性も求められますが、社会貢献には消極的なものと、積極的なものの2つがあります。消極的なものとは営利(金銭的な)の還元を意味し、具体的には色々な貢献活動、寄付活動等(一時期言われたメセナ)です。一方積極的なものとは、企業の製品品質の保証、安全確保など当たり前のことを当たり前に実行する活動を意味します。企業はその活動の中で、順法性に加えて環境保全性と社会貢献性の3つを公明正大に、透明性を保つことでその存在を世に許されるのです。

企業は売上を得て利益を確保しなければなりません。従業員に給与を払いつつ先行投資を行い、継続的に社会に貢献する経済性を確保する必要があります。そのためには収益源である製品が売れなければならず、どんな企業も如何に競争力ある製品を開発し、顧客に喜んで買ってもらえるか、日々腐心することになります。企業の状況によっては、経営不振、販売不振に陥り企業を縮小、最悪の場合は撤退を考えねばならない場面もありえます。
トップマネジメントは、当然のこととして自社の売上、利益に関することに多大な時間を配分せざるをえません。状況によっては、公私の区別なく総ての時間を売上、利益増大に使わざるをえないかもしれません。しかし、どのような状況下においても社内常識が社会常識(法、倫理)を超えることはありえません。

(つづく)