ISO情報

内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選 質問1〜9

Ⅰ 経営者、管理者に関する質問

Q1:「内部監査にあたって」というような宣言文にはどのような例がありますか。

A1 : 内部監査の実施にあたって、監査員、被監査員立会いの下、「監査の基本姿勢」(宣言文)を読み上げるとよいでしょう。次のような事例があります。

  • 1. 内部監査は、マネジメントシステムを評価するものであって人を評価するものではありません。
  • 2. 内部監査は、議論・論争は目的ではありません。また手順の追加は目的ではありません。さらに指摘によって業務を増やすことは目的ではありません。
  • 3. 内部監査は、品質マネジメントシステム、品質管理の仕組みの改善に役立つものです。
  • 4. 内部監査は、問題点を発見し、改善策や解決策を考えるための第一歩です。
  • 5. 内部監査は、お互いにYou !ではなく、We !、Our !の姿勢をとることが大切です。
Q2:経営者が内部監査に関心を持つようになるためには、どのような方法をとったら良いでしょうか。

A2:経営者が常日頃から何を考え、問題視しているかをよく整理し、それと結びつけて、内部監査のメリットとして一般的に言われていることとともに説明します。
一般的に言われている内部監査のメリットを次のとおりです。

  • ・ 事実にもとづいた客観的な証拠を得ることができる。
  • ・ システムについて不適合を見つけ出せる。
  • ・ マネジメントシステムの弱点を発見できる。
  • ・ マネジメントシステムの有効性について、偏見のない情報を経営者に提供できる。
  • ・ 教育訓練によって改善しなければならない課題をはっきりできる。

例えば、顧客のクレームが後を絶たないということに経営者の関心があるのなら、どのシステムのどこに弱点があるかを内部監査で発見できるはずです。システムの弱点を発見し、その対応策をとることで、経営者の関心が深まることが期待できます。内部監査が経営に役立った事例には、問題点の指摘により徹底した再発防止と、幅広い水平展開を実行することにより、コストダウン、工程改善、売上拡大などがあります。内部監査をきちんと実施することによって、決められたことが決められた通りに実施されることがこのような成果になるのです。さらに、システム改善プログラム運用を提案することも上げられます。

  • (1) 部門毎にシステム改善プログラムを作成し、定期的に経営者に報告をする。
  • (2) テーマは内部監査結果を基に、経営者、被監査部署、マネジメントシステム内部監査責任者などが設定する。
    • ≪テーマ例 ≫
    • ・是正処置の実施
    • ・設計変更件数の低減
    • ・購入品の品質管理
    • ・設備故障の予防
  • (3) 進捗状況と効果を内部監査で確認する。
Q3 : 経営者を内部監査の対象にしてもよいものでしょうか。

A3 : 経営者の考えによります。大企業では経営者が内部監査を受けることはないのですが、中小企業では行われているケースを見聞します。その目的は、経営者自身が内部監査を受けることで、組織の全員が内部監査の重要性を理解するところにあります。この他、経営者に重要性を認識してもらうには、次のようなことをするとよいでしょう。

  • (1) 経営者にISO教育の場に出席をしてもらう。
  • (2) 経営会議の議事にISO維持状況を報告する。
  • (3) ISO関係の報告書の様式に必ず経営者の確認欄を設ける。
  • (4) 内部監査報告書には経営者の所見欄を設け、今後の目標等について書いてもらう。
  • (5) 内部監査における体制・分担・計画に対して、経営者の承認欄を作る。
  • (6) 内部監査の宣言文の中に、経営者の関与と経営資源について盛込む。
  • (7) 外部審査結果に経営者からの問題提起をしてもらう。
  • (8) 認証審査に経営者関与に関する箇条5.1への時間配分を多くするよう依頼する。
Q4 : 経営者は内部監査に対し、どのような指示、方針を出すべきでしょうか。実効あるものにするために、何をすべきでしょうか。

A4 :経営者は、マネジメントシステムを改善ツールとして活用することについて、一番感じていること、問題点・解決すべきこと、そして改善すべきことを明確にします。経営者は、それをベースに内部監査テーマの決定、優先順位付け、内部監査重点項目などを内部監査責任者に方向付けします。重点項目の例として、各部門の年度目標、クレーム、製品改善計画、設備改善プログラムなどがあります。
内部監査の目的の一つは、マネジメントシステムの有効性の判定です。問題意識が明確でない、視点のぼやけた指摘内容やまとめ方では、システムの有効性の判断はできません。そうならないためには、前もって内部監査報告書が上がってきたら、今回はこのことをチェックすると予め責任者に告げておきます。告げておく項目の例には次のようなものがあります。

  • ・ 前回の指摘事項がきちんと是正されているか確認する。
  • ・ パフォーマンス指標が向上しているか確認する。
  • ・ 組織として次の一手は何かを確認する。

経営者は内部監査の重要性を認識して、今関心を持っていることを責任者に告げて、それに基づいて内部監査を実施させる、このことが内部監査を実効あるものにする一番有効な手段です。

Q5 : 経営者が内部監査の結果をレビューする方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

A5 : 経営者が内部監査の結果をレビューすることは重要です。経営者は、レビューすることでマネジメントシステム維持・改善のための課題を把握でき、対応することができるようになります。マネジメントシステムの有効性の判定結果は経営者にとって、経営判断の重要な基盤になる筈です。そのためには、何をしたら良いのでしょうか。
組織が小さい場合は、経営者が直接監査報告書の記載事項すべてに目を通すことを推奨します。経営者に生の指摘事項を直接見てもらうことで、そのあと関心を持ってもらい着実にフォローしてもらえることが期待できます。これが内部監査を効果的なものにする一番有効な方法です。
組織が大きい場合には、監査報告書の量も多くなりますのですべてに目をとおすことは困難です。その場合には、事務局で整理して、そのポイントを経営者に報告します。その際でも、重要と思える監査報告書の部分は直接見てもらうようにします。
その際に、経営者に発見された重要な指摘事項に対して、何をすべきか指示を出してもらえるとよういでしょう。そしてこの指示をマネジメントレビューの一部にするとよいでしょう。そして、この指示に対してマネジメントシステム内部監査責任者はフォローアップに責任を持ち、必ず指示された内容が実行されたか見守り、その結果を経営者に報告します。
フォローアップの結果、マネジメントシステムの改善が着実にされることが、マネジメントシステムのPDCAはしっかりと回り始めたといえるでしょう。

Q6 : 経営者がマネジメントレビューを主体的に実施するにはどうすればよいでしょうか。マネジメントレビューの会議の席で内部監査の結果は報告しています。しかし、どうしても概要説明に終わり、それ以上の進展はありません。

A6 : 経営者は、マネジメントレビューを有効な是正処置やシステムの改善につなげるために、リーダーシップを取っていかなければなりません。まず、マネジメントレビューの役割について経営者に理解していただくことが大切です。マネジメントレビューは、内部監査に対して(内部監査だけに限らないのですがここでは内部監査に焦点を当てます)、結果を評価し、次のステップに実行すべきことを指示しなければなりません。内部監査の後のフォローアップにつながる「指示」が無ければ、マネジメントレビューは成立したとはいえません。経営者の指示事項が着実に実施に移されてはじめてマネジメントレビューが有効であったといえるのです。
概要説明に終わってしまっている会議も問題です。報告書の記述方法や会議の進め方に改良の余地があります。内部監査責任者が一方的に説明し、参加者がただ聞いているだけの会議では時間の無駄です。参加者が自由に経営者にコメントと同時に、指示を出さざるを得ないような方法をとりましょう。
例えば、監査報告書又はそれをとりまとめた監査総括報告書に、「経営層の指示」欄を設け、そこへの記入を経営者及び役員に要請します。記入を要請することを前提に会議を進めてもいいですし、記入された内容を巡って会議でなお踏み込んだ検討を行ってもよいでしょう。経営層からコメントを貰うためには、監査側及び事務局としては経営層の支持を貰うための課題を明確にしておく必要があります。事務局の準備がしっかりとできており、マネジメントシステム上の問題点や課題を明確に経営層に示すことができれば、自ずと経営層の方も指示を出さざるをえなくなります。
経営者に期待する前に、まず事務局がやるべきことをやり、その上で、経営者に自覚していただくことが推進するステップであると考えましょう。

Q7 : 内部監査において、管理責任者(内部監査責任者)はどういう役割が期待されていますか。

A7 : 管理責任者は、ISOの共通テキスト(附属書SL)の規定により要求事項の記述からその用語(管理責任者)がなくなりました。ここでの回答では内部監査責任者の役割として説明をしていきます。
内部監査は、マネジメントシステムの維持・改善のために不可欠な活動の一つです。内部監査を効果的に実施し、監査を通じて品質にかかわる組織の仕組みを改善していくことが、内部監査責任者に期待されていることです。
内部監査の個々の活動を着実に推進して、マネジメントシステムの改善に役立っていることが目に見えるようにすることが求められています。内部監査責任者は、表面的な内部監査、マンネリ化した内部監査にならないように、システムの維持、改善の経営レベルでの実行担当者として、責任を果たすことが期待されます。そのためには、内部監査責任者は、経営者との間で密接なコミュニケーションを持たねばなりません。

  • [留意すべき点]
  • ・ 品質について経営者と意思の疎通を図り共通認識を持つ。
  • ・ システムの現状と品質上の問題点を日頃から経営者に報告する。
  • ・ 経営者の品質上の関心事やシステムについての考え、意図、将来像を聞き出し、常に把握しておく。
Q8 : 効果的な内部監査にするために、内部監査責任者は具体的に何をしたらよいでしょうか。

A8 : 内部監査において、計画から実施、フォローアップまで事務局に任せて、内部監査責任者は経営者への報告のみをしている例をみます。それでは、内部監査責任者の責任を果たしているとは言えません。内部監査責任者としての権限を充分に発揮しなければなりません。
まず、内部監査責任者は、以下の項目について明確な指示を出します。

  • ・ 適切な監査チームの選定
  • ・ 適切な監査時期の設定
  • ・ 十分な日程の確保
  • ・ 目的または重点項目の文書での明示
  • ・ 監査の進捗管理の方法・時期の決定。実行責任。

内部監査の実施後は、指示通りに実行されたか確認します。次に監査報告書をチェックします。以下がチェックのポイントです。

  • ・ 指摘内容の全容把握
  • ・ 不適合の原因に迫る指摘となっているかの検討と必要な指示
  • ・ 是正処置・予防処置の要否判断
  • ・ 早急な対応の実施・推進
  • ・ 是正処置・予防処置の実施の指示
  • ・ 要改善点の解決のための部門責任者への指示・指導

その上で、内部監査結果を経営者に報告します。さらに、是正処置の終了後に、以下を実行します。

  • ・ 是正処置・予防処置の効果の確認。
  • ・ 是正処置の適切性の評価――真の原因の追求。再発防止のレベル評価。
  • ・ 監査員の是正処置終結の検討・評価。
  • ・ 水平展開への必要性評価、指示。
  • ・ 予防処置への展開の必要性評価・指示。

内部監査責任者は、このように組織全体の視点で、内部監査を計画し、チェックし、フォローアップを行います。また、部門責任者に強制的に是正処置を指示するなど事務局ではできないことも内部監査責任者の果たすべき役割です。さらに、能力のある内部監査員の選任・育成・再教育も内部監査責任者に求められていることです。

Q9 : 内部監査責任者は、内部監査を自ら実施すべきでしょうか。また、全ての内部監査に立ち会うことが必要でしょうか。

A9 : 内部監査責任者は、必ずしも自ら内部監査を行う必要はありません。しかし、監査員のレベルを維持し、育成する立場にあることから、監査の実施方法について、監査員に示すことが求められる場合があります。この場合には、やって見せることが最も良い方法です。
では監査に立ち会うべきかどうかということについては、組織の大きさにも関係しますが、必ずしも必要はありません。物理的に不可能な場合もあります。ただし、監査現場の様子や監査の進捗がどうなっているかを把握しておく必要はあります。ポイントを決めて参加する、或いは巡回して参加すべきでしょう。
監査者と被監査者の応答を聞いておくことによって、システムの優れた点、弱点が把握できます。また巡回参加によっても全体の進捗も判ります。さらに、システム上の同じ問題点が複数の部門にあたることが判ることもあります。
後で報告を聞くだけでは全体の傾向は把握できません。是正処置の適切性についての判断の基礎になる情報を得るためにも、重点部門の監査に絞ってでも立ち会うべきでしょう。