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内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選 質問10〜17

Q10 : 内部監査報告書について、内部監査責任者は経営者に対してどのように報告したらよいでしょうか。また、内部監査報告書に経営者の承認は必要でしょうか。

A10 : 内部監査責任者は、内部監査の結果について、経営者に報告します。経営者は、報告を受け、所見・見解を述べ、是正・修正すべき点があれば指示することになります。内部監査責任者は、指示を受けた対応策を実施し、実施結果を経営者に報告します。
内部監査の結果は、マネジメントレビューへのインプットの不可欠な部分です。内部監査責任者が、マネジメントシステムの実施状況を経営者に報告することが、規格で要求されています。このことから内部監査責任者は、内部監査報告書をまとめ、経営者に提示することが求められていると考えるべきでしょう。
内部監査報告書の量が少ない場合には、全部を経営者に提示します。量が多い場合には、全体としての分析を行い、その結果をまとめ、経営者に提供した方が良いでしょう。分析及びまとめに際してマネジメントシステムの見直し、改善に役立つ情報を要約して経営者に示します。
内部監査報告書には、内部監査責任者の確認印は必要です。しかし、経営者の承認印は、必ずしも必要とは言えません。内部監査責任者が所見を含めて報告し、必要な指示を受け、それを実行する責任をもって実施していることが実証できれば良いのです。

Q11 : マネジメントレビューで経営者の所見・コメントは表明されますが、是正処置はすすんでいません。是正処置を促進するためには、内部監査責任者は何をしたら良いでしょうか。

A11 : 内部監査責任者は次のことを推進すべきでしょう。

  • ・ 積極的に是正処置の進捗を管理し、各部門責任者に対して直接フォローする。
  • ・ 経営者を是正処置の進捗管理に巻き込む。管理層レベルの会議で報告するなど。
  • ・ 是正処置の立案や実施に関心を持っていることを示す。
  • ・ 各部門のキーマンに是正処置について理解を深める教育を行う。

進捗管理のためには、進捗管理表を作成し、消し込みを行ないます。対応策の立案、実施に対し、予定日・完了日を記入します。また、経営者への報告書も記入します。報告は品質会議で定期的に行ないます。こうしたことが、是正処置の促進に役立ちます。
さらに、内部監査責任者は、全体的な視点で是正処置へ対応することが求められます。部門管理者だけでは対処の困難な部門横断的な問題を積極的に拾い、内容の把握、優先順位づけ、部門間調整などを行ないます。

Q12 : 内部監査の実施に当たって、経営者、内部監査責任者、監査員の役割は比較的はっきりしていますが、職場の管理職の役割が明確でありません。

A12 : 管理職は、管理者欄にサインをするだけが仕事ではありません。被監査部門の長として、以下のことを行なう必要があります。

  • (1) 品質目標の達成状況や業務上の問題点を監査チームに提供し、監査のポイントについて話し合う。これにより、監査計画作成に協力する。
  • (2) 事前準備として、マネジメントシステムの実施状況をチェックする。
  • (3) 内部監査を受審する。
  • (4) 監査チームに指摘された不適合の是正処置・予防処置を実施する。

管理職は、自部門のマネジメントシステムの実行・維持・改善に責任があります。このため、自部門の内部監査だけでなく、関連する全ての部門の内部監査に注意を向けます。さらに、全体最適化を目指して、是正処置・予防処置について部門間調整を行うのも管理職の責任です。
管理職に内部監査活動に対して意欲が見られない場合は、実効の上がらない形ばかりのマネジメントシステムになる恐れがあります。経営者も巻き込んで対策を打つ必要があります。その場合は、内部監査のシステムの中に管理職を組み入れるように強制的なルールを考えるべきでしょう。
以下の方法があります。

  • ・ 管理職は必ず内部監査員になって他の職場をみる。
  • ・ 監査時の対応は管理職が直接行う。
  • ・ 是正処置に係わる記述、実施の検討を管理職に義務付ける。
  • ・ 内部監査責任者及び直属上司への報告を義務付ける。
  • ・ 監査結果検討会等での報告を義務付ける。
Q13 : 内部監査に対して、管理職はどういう気構えで対応すればよいでしょうか。

A13 : 管理職の重要な仕事として、部門の業務がマネジメントシステムの手順どおりに実施されることを確実にすることとともに、積極的な業務改善を継続させることがあります。この仕事をするのに内部監査を積極的に利用しましょう。内部監査には大きなメリットがあります。また使い方を間違えますとマイナス面も出てきます。

  • (1)内部監査のメリット
    • ・ 監査員が自分の代わりに、冷静に、偏見のない眼で見て、業務をチェックし問題を見つけてくれる。
    • ・ 目が届かない/マンネリになっていたことに対して新しい視点を入れられる。
    • ・ 客観的に、前工程・後工程の目で自部門の評価をしてもらえる。
    • ・ 組織横断的なプロセス上の問題を解決するきっかけがつかめる。
    • ・ 他人に指摘されることによって、「改善しなければ」という自部門メンバーへのモチベーションが生まれる。
    • ・ 監査の準備を通して、業務を整理できる。

  • (2)ネガティブに考える人の内部監査マイナス面
    • ・ 自部門のアラ探しをされる。
    • ・ 準備と監査の実施に時間をとられる。
    • ・ 是正処置というやっかいな仕事が増える。

マネジメントシステムの効率的な実施、維持は、経営者からの指示をいかに管理者が実現するかにかかっています。内部監査においても、管理職が積極的に活かす意気込みをもって行動すべきでしょう。

Q14 : 内部監査について、管理職にもっと関心をもってもらうためにはどうすればよいでしょうか。

A14 : 脇役に回りがちの管理職にはもっと関心を持ち、活用して貰う必要があります。活躍の場をあたえるように管理職を巻き込むことが重要です。

  • ・ 定期的な経営者への報告に、各部門の内部監査への取組み状況を報告する。報告内容は、不適合件数、同種不適合の再指摘件数、是正処置件数、他部門の是正処置の水平展開件数などとします。
  • ・ 重要な是正処置事例の定期会議などでの報告
  • ・ 是正処置の改善効果把握と優秀事例の評価と他の部門へのPR

内部監査は、システムの有効性の判定のために行なわれています。このことに気がついてもらうことも必要です。システムの有効性をみることで改善の機会が得られます。管理職はその職場の改善に対して常に関心を持っているものです。例えば部門別報告書に、事例を挙げてのシステム有効性の判断結果を掲載することにより、管理者層の競争意識をくすぐっている例もあります。

Q15 : 管理職は、内部監査結果から職場の改善項目の抽出をどのように行なえばよいのでしょうか。

A15 : 内部監査の結果としては,良好であると結論付けられた場合と、幾つかの不適合としての指摘を受けた場合があります。
良好であり、特に問題として指摘する事項がない場合、規格の要求事項としては、その結果をマネジメントレビューで報告することだけです。しかし職場の管理職としては、この場合でも内部監査の結果を利用することができます。他部門の指摘に対する内容の、自部門の同種業務との比較や、監査中における質疑からの問題点の種の収集を行なって下さい。自部門の事業改善に役立つ情報が得られます。部門の業務の問題点の認識を持ち、改善に強い意欲を持つ管理職なら、必ず得る事がある筈です。
不適合の指摘をうけた場合、ただ不適合報告書の原因欄に見かけの原因を書き込めば終わりとはしたくないものです。必ず背景にある原因―真の原因―まで遡る必要があります。それができるのは該当職場のみと考えるべきです。不適合の原因の分析は、指摘の内容の性質を分類することから始めます。分類方法は目的によって変える必要があります。

  • ・ システム上の問題か、プロセスに関係する問題か
  • ・ 重要な問題か軽微な問題か
  • ・ 関連事項が発生する可能性があるか、単発的と考えられるか

このような分類を行なったうえで、多くの考えられる原因からしぼり込みます。これらのデータを蓄積することで職場の現状把握に役立たせます。ここから、職場の改善項目が抽出されます。

Ⅱ 内部監査員に関する質問

Q16 : 我社は従業員約350名16部門の会社で現在内部監査員の数は8名です。内部監査員の数は何人くらいが適当でしょうか。

A16 : 内部監査員の必要人数を算出する基準はありません。内部監査のタイプ(集中型か分散型か:これについては後半の質問に出てきます)によっても人数の算出の考え方が変わってきます。集中型の内部監査を考えるならば、従業員の1~2割が目安です。しかし、実際にはいろいろな考え方があります。人数が多くなると監査のバラツキが大きくなるということで最小限の監査員が専門的に内部監査にあたる少数精鋭主義をとる組織もあります。その場合は、分散型のタイプの内部監査を実施している組織が多いようです。内部監査室のような部署に属していて、1年中内部監査をしている形態をとっています。このような場合は、ご質問の規模の組織だと4名くらいの人数でよいでしょう。
一般的にいえば、企業全体のマネジメントシステムのレベルアップのためにもできるだけ多くの内部監査員を養成しておくことがよいことです。できれば課長などのマネージャーは全員が内部監査をできるようにしておくことが望ましいことですし、少なくとも職場の1単位あたり、1名以上の内部監査員を養成しておきたいものです。その人達が職場のシステム維持の要になってくれることが期待できます。また、同一職場に監査員が偏ることを防ぐこともできます。
ご質問の会社は16部門ありますが、8名の内部監査員が在籍していますので2名編成で4チーム作れますから、1チームが4部門を担当することになります。もし集中型の監査をしようとしますと、4部門の監査は監査実施から報告書作成までの業務負荷は大きいものがあります。できれば、倍の16名の内部監査員を確保しておきたいものです。理想的には冒頭言いましたように従業員総数の1割である35名の内部監査員を養成しておくとよいと思います。
内部監査員にふさわしい人材の数や養成にかかわる費用を考慮に入れて、何人の監査員を養成するかを判断して下さい。

Q17 : 内部監査員にはどのような知識や能力が必要となりますか。

A17 : 次のような知識や能力が必要だと考えられます。

  • a. マネジメントシステム及び監査に関する一般知識
  • b. 自社のマネジメントシステム及び業務プロセス
  • c. 自社特有の固有技術/知識
  • d. マネジメント能力
  • e. 監査技術

ここでは必要な知識や能力をどのように身につけたらよいかについて簡単に説明しておきます。
「a. マネジメントシステム及び監査に関する一般知識」と「b. 自社マネジメントシステム及び業務プロセス」は、内部監査員育成のための教育訓練機関の研修やOJTプログラムによって学習することができます。
「c. 自社特有の固有技術/知識」については、組織内の業務経験をつうじて会得するしかありません。監査員の認定にあたり、経験や能力を評価し適任者を選任することが必要となりますが、監査員はあらゆることに精通しているスーパーマンではありません。特別な知識がいる場合には、専門家にアドバイザーとして参加してもらうこともできます。
「d. マネジメント能力」については、管理者の経験から得られますので、企業によっては管理職でないと監査員になれないとしているところもあります。広い視野から複雑な業務の全体を理解した上で仕事の仕組みを改善するマネジメント面の能力も欠かせません。これらの能力は永年にわたる経験から養われる部分も多く、一朝一夕での習得は難しいものと思われます。内部監査員の資格を管理職昇進の条件にしているところもあります。少なくとも職場で他人からも認められ、仕事をリードできるくらいの力量を持った人を監査員に選ぶべきでしょう。
「e. 監査技術」を構成する要素は、判断力や問題解決能力などです。これらは、企業人としての共通して重要なテーマですから、組織ごとに自社で独自プログラムを組むことが望まれます。外部の研修機関を活用することもよいでしょう。

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