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内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選 質問50〜61

Ⅵ 是正処置、フォローアップ監査に関する質問

Q50 : 内部監査での指摘事項はすべて是正処置が必要ですか。すべてが必要でないとしたら、その判断基準はどうしたらよいでしょうか。

A50 : 原則として、すべての指摘事項について是正処置を行う必要があります。指摘事項に対してまず、不適合を解消するために、当面の処置の必要性を判断し、製品、プロセス、組織、システム、要員などに対する処置を行います。
次に不適合の原因の追求をします。
是正処置は現存している不適合の原因を除去する処置です。原因の追求が表面的に留まっていれば、是正処置も当面の対策以上に進めることができません。いかに深く根本的原因を追求するかで、有効な再発防止策が取れるかどうかが決まることを忘れてはなりません。

Q51 : 監査での指摘事項に対して、被監査部署に原因と是正処置を記載して貰っています。しかし、ほとんどの報告の原因は“チェック漏れ”とか“教育不足”とかになっています。そのため、是正処置も“注意する”とか“教育する”とかになっています。これでは不適合が減らないと思い、よい解決策をお聞きする次第です。

A51 : 指摘の仕方を見直すことが必要です。指摘事項は現れた不適合の事象を記述しなければなりません。是正処置が「チェック漏れ」や「教育不足」など表面的なものになっているのは、指摘の仕方に問題があります。例えば、下記の例1では不適合の事象が不明確です。例2のように具体的に指摘すれば、原因と是正処置も明確になってきます。

  • 例1. 作業者の操作は作業手順書に整合していない。
  • 例2.手順書には温度・圧力を調整し日誌に記録するとあるが、現場には温度計だけしか設置されていない。

一方、是正処置も見直しする工夫があります。是正処置は質問にあるような雑駁な分析、表現では真因に手を打つことができません。応急処置、一次原因、二次原因、拡散現因、人的要因など多岐にわたる分析が必要です。帳票にもそれらの欄を作成しておけば、これらについて書かざるを得ません。内部監査責任者は、是正報告書を必ずチェックし、重要な案件では部門責任者や、場合によっては経営者までに今回案件について調査することも行います。その結果、何らかのことに不充分であると判断した案件は監査員に差し戻すことも考えるとよいでしょう。
さらに、是正処置についての検討会議を開催して、関係者からの意見聴取を行うことも是正処置が表面的になることを防止することに役立ちます。

Q52 : 内部監査の指摘事項の真の原因を追求するためには、どうしたらよいでしょうか。

A52: 原因追求のための問題解決手法を活用することが一つの解決策です。手法の一つとして、「なぜなぜ5問」がよく使われています。真の原因に迫るために、なぜなぜと5回上流の方へ追求していく手法です。また、その前にVTA(Value Tree Analysis : JAXAホームページを参照)を行い、なぜなぜの出発点を決めることもよいと思います。原因追求のためには、当該業務を熟知していることが重要です。そのために、当該業務の経験者とともに検討することが求められます。

次のような7ステップの是正処置プロセスも推奨できます。

  • 1.状況の説明
  • 2.原因の明確化、根本原因の決定
  • 3.暫定処置の決定
  • 4.恒久処置の決定
  • 5.処置の実施
  • 6.処置の有効性確認
  • 7.継続的管理
Q53 : システムの是正処置がおざなりになりがちです。よい対策はないでしょうか。

A53 : 第一に、是正処置の目標をできるだけ具体的に設定します。次に是正処置に優先順位をつけます。原因調査及び処置立案に、内部監査リーダーにアドバイザーとして参加してもらうことも有効です。実行に当たっては、システム改善に効果が上がると想定される是正処置の優先度を高くします。優先順位の高い是正処置から重点的に実行をしていきます。
是正処置計画は、有効に是正処置を実施するために必要であり、計画には是正活動のステップごとに完了日を記述します。実行後のフォロー責任者を明確にし、責任者が品質会議等で実施状況を公表することにするとよいでしょう。

Q54 : 不適合報告書に記載されている是正処置をみると、製品の処置について書かれおり、マネジメントシステムの是正処置になっていない場合がかなりあります。本来の是正処置を確実に実施していくためには、どんな方法をとったらよいでしょうか。

A54 : 不適合品の処理とマネジメンとシステムの是正処置とを区別するよう教育し、認識を変える必要があります。不適合品の処理は、顧客への製品に対してとる処置であり、 是正処置はなぜその不適合品が生じたかの原因をシステムの面から分析して対策をとる(原因を除去する)処置のことをいいます。
報告書の様式の見直しも必要でしょう。不適合品の処理と是正処置とが同一の記入欄になっているならば、この両方の欄は分けるべきです。報告書のこの二つの欄へ記入がされていない場合は、遠慮することなく返却します。その場合、不適合品の処理と是正処置とが異なることを丁寧に説明することが必要です。是正処置確認会議等で処置内容を関係者で議論することも有効でしょう。
書かれている是正処置が実行されたことを確認し、その効果の程度を現場で調査するようにします。是正処置の実施には、多くの経営資源を必要とする場合がありますし、効果の確認までには長時間を必要とする場合もあります。そのような場合への対応として是正処置進度チェック表を作成することを薦めます。チェク表には是正の責任者を明記して、品質会議等で進行状況を確認するマイルストーンを記入します。品質会議において、是正処置の進行状況を報告し、経営者からのアドバイスをもらうことで「是正処置の着実な実施」を可能にすることが期待されます。

Q55 : 是正処置の実施状況を社内の規定で定めた時期に確認しています。しかし、顧客への確認や下請負契約者への指示など第三者が介在する場合には、所定の期日には確認できないことがあります。よい解決方法はないものでしょうか。

A55 : 原則は、「監査側と被監査側で合意した期日までの完了」です。しかし、顧客からの承諾回答(特別採用など)とか下請契約者からの文書回答がいつまでも入手できない場合があります。そのような場合に是正処置がクローズしないケースがでることがあります。クローズしない原因として、次の二つがあるようです。
一つは、顧客に遠慮して請求しない。もう一つは期日が来ているのに督促するのを忘れてしまっている場合です。前者の場合は、顧客への確認内容を見直して下さい。内容は、「顧客満足を満たすための確認」のはずです。その点を強調すれば回答の入手ができるようになると思われます。場合によっては、依頼した内容に顧客が満足しておらず回答が遅れている場合があります。顧客の検討はよりよい改善のヒントが含まれているはずですので、是正処置クローズよりも改善ヒントの入手に優先度を置いて顧客と連絡し合うことがよいと思います。
後者の場合は、日程管理の問題です。単に是正処置報告書を積んでおくだけでは忘れてしまうことになりがちです。月間の計画表やメモ帳等に督促期日を記載して忘れないようにします。

Q56 : 是正処置を簡単に実施できない場合があります。処置や効果の確認に長期間を必要とする場合です。そのような場合にはどんな方法で処理したらよいでしょうか。

A56 : 設備投資を必要とする場合、組織に関わる問題、顧客の了解が必要ですから、なかなか予定のスケジュールどおりに実施できない場合があります。是正処置そのものには、それほど時間を要しなくても、その効果があったかどうかの確認に時間を必要とする場合もあります。
まず、短期的に処置できる項目とある程度の期間が必要な項目を区分します。長期対応項目については、他の項目とは別にリストを作成します。同時にその是正処置報告書を別ファイルに入れ、ペンディング事項とファイルに明記して、一定期間毎に見直しをするルールを作っておきます。かなりの投資を必要とする場合などにはこの方法をとるとよいでしょう。
効果の確認に時間がかかる場合には、確認できる用件と時期を明確にしてそれをリスト化します。このリストを品質会議などで定期的に見直す、または担当している部門から 報告してもらうことにすると忘れずに確認できるでしょう。

Q57 : 内部監査の結果を有効に活用し、組織のマネジメントシステムの改善に役立たせたいと考えています。そのために内部監査の結果を見える形にするにはどうしたらよいでしょうか。

A57 : 内部監査での指摘事項は一覧表にまとめます。まとめるのにあたって、分類し、指摘事項をいくつかの項目に集めます。これによって自分の組織のマネジメントシステムの現状がより理解できるようになります。このようにした一覧表を、回覧や会議等での報告時に示すことで、組織に属する多くの人に内部監査の結果と、それによって取られたまたは取るべき是正処置を理解してもらえるようになります。
取るべき処置の水平展開は、かなり難しいことですが、このことが有効に実施されると成果は格段に大きくなります。指摘された部署であれば不適合の内容が分っており、何を直したらよいのか、なぜ直さなければならないのかを理解しています。しかし、それ以外の部署では、他人事と考えがちです。これを各々の部署に自部署として対応すべき課題と認識させなければなりません。そのためには、内部監査責任者がかなり積極的に行動しなければなりません。次の手順で進めることもよいでしょう。

  • 1. 実施すべき項目とその内容を明確にする。
  • 2. 実施したらどういうことが良くなったのかをまとめる。
  • 3. 実施すべき部署に文書にて実施を指示する。
  • 4. 実施の結果をフォローアップし、成果を経営者に報告する。

水平展開表を作成し、ある部署の指摘に対し関連する部署を明確にし、品質会議等で関連部署の確認状況をフォローすることが水平展開には必要です。

Q58 : 内部監査の是正処置の再発防止を実施しなければならないような仕組みを作りたいと考えていますが、有効な方策はありませんか。

A58 : 内部監査はトップの依頼で行っていると考えます(形式的にしても)と、是正処置はトップ層が最終確認すべきものです。すべての是正処置をトップ層が確認することは現実的ではありませんので、仕組みの最初に考えられる第1のものは、是正処置の優先順位付けでしょう。優先順位付けをするためには、是正処置の重大性を決める基準を決める必要があります。例えば、是正処置の重大性を5段階に区分して優先順位の1~2はトップ層が最終確認すべきものであるというような仕組みを決めます。第2の仕組みは、トップ層が確認するに至るまでのステップを明確にする規定を決めます。
不適合の再発を防止するために、まずその原因を根本にまで掘り下げて明確にする規定、次に原因に対する対応策の検討、分析、検証の規定を作成します。

Q59 : 内部監査の不適合から、予防処置の実行に移る仕組みを教えてください。

A59 : 予防処置は、潜在している不適合の発生を防止するために、その原因を除去する処置です。「潜在している」ということは、「見えていない」ということです。見えるようにするためには、まず、掘り下げて発掘することが必要です。そのため、顕在した不適合からの類推や内部監査での指摘事項の調査・分析から出来るだけ多くの考えられる不適合を抽出します。「他部署の不適合を自部署の業務に置き換えて発生する可能性があるものを決める」ことが比較的容易に実施できることから、しばしば効果の上がる方法として使われています。
なお、是正処置・予防処置を文書に示す場合、この両者の違いを明確に認識して対処させるために、両者の記述欄又は用紙は分けることが有効な手段です。予防処置としての必要性を担当者が感じている場合は、予防処置欄を作っておくことによって潜在している問題を顕在化させることができ、比較的早く予防処置のための手が打てることができます。

Q60 : フォローアップ監査はどのような場合に必要となりますか。その決定はどのように誰がするのでしょうか。

A60 : 内部監査での指摘事項に対して是正処置が取られています。この是正処置は実施されていることと有効であることを確認する必要があります。比較的単純な是正処置であって、是正処置報告書等の文書で再発防止の実施まで確認できるのであれば、フォローアップ監査が必要とは限りません。しかし、文書だけでは是正処置が再発防止にも有効であることが確認できないことが多々あります。そこで再度追加の監査を行い再発防止の有効性を確認する必要が出てきます。そのような状況における監査をフォローアップ監査と呼び、是正処置の実施状況と有効性をシステム運用の現場で評価します。フォローアップ監査の必要の要否は、是正処置報告書等の文書が提出されてから判断する場合と、監査指摘事項を指示する段階で判断する場合があります。前者の場合は提出された文書からその有効性を評価します。評価ができたらフォローアップ監査は不要です。後者の方法は、是正処置の実施の要否とその有効性の評価を決められた期日までに確認したい場合に行われます。ある程度の期限を切って、是正処置の実施を推し進めたいときは、この方法がよいでしょう。フォローアップ監査の要否の決定は、内部監査リーダーが行う場合とマネジメントシステム内部監査責任者が行う場合があります。大きな組織では、監査リーダーが決定している場合が多いようですが、小さな組織では内部監査責任者が決定したほうが円滑な運営ができるようです。

Q61 : フォローアップ監査の実施に関してアドバイスを下さい。

A61 : フォローアップ監査の実施項目をリストアップすることが大切です。この際、フォローアップ監査の目的である、実施状況の確認(記録による検証が必要)と、有効性の評価を確実に実施することに留意します。リストにあげられた項目についての監査リーダーと監査終了期日を決定します。これをチェックリストにして、項目毎に消し込んでいきます。さらにフォローアップ監査の結果がマネジメントレビューへのインプットになることを確実にするため、リストに報告日を記入します。そして、経営者にきちんと報告したことを監査者全員に伝えます。このことによってフォローアップ監査の結果が重要であるとの認識を深くさせることができます。

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