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内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選 質問62〜69

Ⅶ 監査の各種課題に関する質問

Q62 : 文書体系の単純化を図りたいのですが、内部監査をどのように計画すればよいのでしょうか。

A62 : 審査に対応するために綿密で完璧な文書を作成する、また監査の是正処置に新しい文書を必要とするなどが文書が増える要因でしょう。組織発足時には少なかった文書が、組織がシステムを運営していく間に、是正処置、例外事項発生対応、変化への対応などにより新しいルールを追加して、文書はだんだん増えていきます。
一般的に、文書体系を考え、1次文書、2次、3次文書と段階的に細部の規定に区分されていきますが、どこにも位置づけられていない文書もあったりします。文書は上位者の承認を必要としますので、承認時に文書の位置付けを明確にすることが必要です。
効果的なシステムの運用には、シンプルな文書体系が不可欠であり、そのためには、以下のように内部監査を計画し実施します。

  • (1) 文書体系の単純化を視点にした内部監査計画を作成する。
    • 1) 監査で現在の業務に不要な文書を発見して、指摘事項として取り上げ、是正を要求する。
    • 2) 是正処置などによりシステムを変更する時には、既存文書の手直しを前提として考える(文書の新設を禁止するなどの強硬策をとる例もある)。
    • 3) 文書の改訂、変更の都度、文書の必要性がなくなったものはないか、をチェックする。
  • (2) 「文書体系の簡素化」をテーマとして臨時内部監査を実施する。
    • 1) 監査目標:例えば、文書数を二分の一にする
    • 2) 監査手順:
      • a)品質マニュアル―2次文書―3次文書とたどって、余計な規定、古い規定などがないかを監査する。
      • b)業務のインプット、アウトプットとなる文書のチェックを行ない、それらの必要性を確認する。
    • 3) 文書・規定類の重要性チェックのポイント
      • ・ たまにしか使用されない文書(記録の頻度から逆算して推測できる。)
      • ・ 最新化されていない文書(例えば、2年間改訂されていない指示書 など)
      • ・ 重複する文書、類似する文書
      • ・ 内容の過剰や不足
      • ・ 文書に関連するトラブル
    • 4) 評価:年間に減らした文書
Q63 : 内部監査の実施方法として集中型と分散型がありますが、どちらを採用するのがよいか教えてください。

A63 : 集中型とは、2~3日の内部監査で全部門を実施する、分散型とは毎月1~2部門ずつ年間にわたって内部監査を行う、という整理でお答えします。
2タイプの内部監査は、単に期日を集中させるか分散させるかということだけではない長所と欠点を持ち合わせています。企業の現在の活動状況からくる制約もあり、一概に2タイプのどちらが有効かの結論はいえません。
一つ目のタイプの集中型は、短期に全体を総合的にチェックできます。一つの部門から他の部門へ引き継がれる業務の流れやそこでのインターフェースがうまくいっているかなど一貫性を保ちながら調べることができます。つまり、システム全体の姿を体系的に把握でき、有効性の判断などはし易いでしょう。集中型は企業全体イベントという形で行われることから、組織内の緊張感の醸成や、その後のフォローアップ、反省などはやり易く、マネジメントレビューへの橋渡しも容易と考えられます。
一方、もう一つのタイプの分散型では、計画をうまく組むことができれば、部門ごとに深みのある監査を行うことができます。被監査部署の業務をよく知った監査員がその部署の問題に集中し、じっくりと詳細に監査をすることができます。監査にかける時間の設定にも比較的自由がききます。組織の活性化という面からみても、イベント盛り上がりはありませんが、年間を通して、どこかで監査が実施されているので、内部監査の継続性を保ち易く内部監査の定着に貢献することができます。分散型は、組織の全体像を描くことは苦手で部門間のつながり、インターフェースなどは掴みにくいという欠点を避けることができません。
通常業務への影響については、集中型は監査側、被監査側とも一挙に動員することで、その期間業務が停滞するという影響はあります、時期が限られているので、かえって監査の負担は軽いというライン部門の生の声もあります。
一般的には、システムが未熟の間は集中型、ある程度システムが定着した後は分散型で行うとよいと思います。どちらを採用するかは監査の目的、是正のやり易さ、監査員の人数とその時々の企業の業務状況によって判断して下さい。

Q64 : 内部監査員の担当の割り当てについてお聞きします。割り当てに当たって、どんなことに注意すべきか教えてください。勿論、被監査部門の直接責任から独立している監査員を割り当てるべきであることは知っています。

A64 : 被監査部署にマッチした監査員を充てることは、システムの有効性を高め、効果的で深みのある監査を行うためには欠かせないことです。ところが、日常の仕事を抱え忙しく、しかも少ない内部監査員の中から選ぶわけですから容易なことではないでしょう。選任の際の注意事項を以下に挙げます。どれを優先させるかは、状況に合わせて判断して下さい。
(1) 経験の浅い監査員はベテランとペアーを組む
監査を知識として知っていても、経験がないとよい監査はできません。最初はどうしても被監査部門の仕事の仕組みを客観的に見ることができず、自分が興味を持つ範囲に注意が向かいがちになります。そうすると、問題点の発見が偏りせっかく時間を掛けても期待どおりの成果が得られなくなります。
初めて監査を行う場合、1、2回は経験豊富な人と組み、監査のポイントを体得するとよいでしょう。
(2) 被監査部門の業務を分っている人を選ぶ
被監査部門の業務フロー、他部門とのインターフェースを知っていないと、単に現象的な不適合の発見にとどまり、問題の解決につながる指摘に深められないことがあります。
被監査部門の上流または下流部門など、仕事上その組織にある程度の関係がある人を監査員に充てるのもよいでしょう。
(3) 技術的な専門知識を持っている人を選ぶ
例えば、開発・設計部門の監査にテクニカル面の知識を持たない人が当っても、問題の所在が分からず、表面的な監査に終わってしまうことがあります。適任者がいない場合には、監査員とテクニカル面のサポートをする人がチームを組んで監査を行います。
(4) マネジメント上の職位、経験を考える
被監査部門の対応者が地位の高い人であれば、遠慮する気持ちがあって、適切な質問、指摘ができないという懸念があります。監査員の役職上の職位、経験、年齢なども考えて、担当する部門やチーム編成を決めるとよいでしょう。
(5) 過去の監査経験を基にする
経験を積んだ監査員がポイントをきめ、短時間で行うことで監査は効率的になります。そのため、監査実施後に被監査部門を含め監査内容を評価し、データとします。そのデータをベースに監査員を選任します。なお、評価結果を監査員にフィードバックすることも有効な監査を続けていくためには重要です。

Q65 : 内部監査員の構成について教えてください。何人でやるとよいでしょうか。一人でもよいのでしょうか。また、組織外(社外)の人を入れてもよいのでしょうか。

A65 : 監査員の数はできれば複数の方が、より広い視野で監査ができます。そのため、通常は監査リーダーとメンバーの2名で監査を行います。被監査部門の業務に精通している人、マネジメントの仕組みに詳しい人、テクニカル面での専門知識を持った人など異なる能力や経験を持った人を組み合わせます。このように、ペアーで監査にあたる方がより効果が上がるでしょう。
ただし、複数の監査員をつけられない場合は、1人で行うこともやむを得ません。その場合には、適切な監査ができるベテラン監査員をあてて下さい。
次に、組織外どこから選ぶかですが、監査員としての責任を自覚し活動できる人であれば、組織外の人を内部監査員として選定することは問題ありません。当然ですが、監査員として公正な立場に立つことを理解しており、組織内メンバーとして経営者に報告できる監査内容を期待できる人であることが前提となります。ただし、是正処置の方法を含め、社内のマネジメントシステム改善に積極的に関わっていく場合、その企業のビジネスに関する知識や独自の仕事のやり方を熟知していないことなどに限界があります。その限界を知った上でうまく活用していく必要があります。
監査リーダーとメンバーの2名に組織外の監査専門家(本社の品質保証など)を加えて、3名の監査チームの監査もよく見られます。内部監査に馴れていない監査リーダーとメンバーを、監査の専門家が実地で指導することで監査を充実させることのできる利点があります。

Q66 : 有効的な内部監査を行うための方法にはどの様なものがあるのでしょうか。

A66 : 監査の目的を一つに絞ります。例えば、文書管理の適切性、力量のレベル評価、部門間コミュニケーションの課題摘出などのような問題を明確にします。次に絞った問題に関連した質問を含んだチェックリストを準備します。チェックリストを作るときは、事前に被監査部門の調査を行います。クレーム、不良発生状況、前回の内部監査の指摘、外部監査の指摘の原因(直接の原因ばかりでなく、真の原因を追求することが重要)を調査し、今回監査の目的にそったチェクシートにします。
監査は次のような方法により行います。

  • 1) 今回監査の目的の内容を良く知っている監査員を選ぶ。
  • 2) サンプルを増やす。同じ質問を3人以上に行う、3つ以上の階層をサンプルする。それで疑問点があれば、その理由と原因が分かるまで質問を続ける。
  • 3) サンプルをとったプロセスの後工程を監査する、例えば営業のあと設計を監査し、活動がプロセス間で適切につながっているかを評価する。
Q67 : 監査で時間が足りなくなってしまった場合、時間を延ばして予定項目を全部実施すべきですか、それとも全項目をさらりと時間内に監査すべきでしょうか。

A67 : 時間に捉われて簡単にさらりと流すのは避けるべきです。監査の内容・効果についての信頼感を損なうことになります。かといって時間をオーバーすることは緊張感を失いますし、計画性に疑問をもたれるもとになります。基本は綿密に計画をたて、できるだけ重点を絞って監査をすることです。監査の時に使用するチェックリストを有効に使うと監査の効果が上がりますのでそのポイントを次に紹介します。

  • 1)チェックリストを作るとき、一つの質問でいくつかの要求項目の適合性を判断できる様にする。
  • 2) チェックリストに優先順序を付けておき、重要項目から監査を行う。

時間内で監査ができなかった場合は、監査リーダーが責任をもって対応を考えます。例えば、30分時間延長する、この時点で打ち切る、残りの監査を実施するとしたら何時まで行うのか、などについて判断します。判断内容を被監査者に伝え、了解を得た上で対応します。時間管理は監査リーダーの重要な義務です。時間が守れないと被監査側との信頼関係も損ないかねません。監査リーダーの明確な態度、対応が望まれます。

Q68 : 組織として改善に必要なポイントを指摘できるようになるためにはどうしたら良いのでしょうか。

A68 : 改善に必要なポイントを指摘できる監査を行うには次の内容を考慮するとよいでしょう。

  • 1) 業務の流れに沿って監査し、業務フローの滞り、重複に注目する。
  • 2) 目標達成の活動に注目する。
  • 3) 文書は最新化されているか確認する。
  • 4) 組織の課題を事前に調査しておく。

業務の流れに沿って監査することで、仕組みの改善のヒントが得られます。注目する業務毎に必要なインプットと次工程へのアウトプットを確認します。通常は、前の工程のアウトプットは次の工程のインプットになっていますので、そのような繋がりになっているか確認します。これを業務フローの順に確認していくことで、無駄な作業や不足している業務が発見できることになり、改善すべきポイントを抽出することができやすくなります。

Q69 : 監査員レベルの平準化はどのようにすればよいのでしょうか。

A69 : 監査員レベルの平準化は次のことを考えるとよいでしょう。

  • 1) 定期的にリフレッシュ教育を行う。
  • 2) 今まで発見した不適合の事例を基に討議する(是正処置の有効性の面から、および指摘の妥当性の面から。監査手法の面から、議論する)。
  • 3) 是正処置の有効性の確認を議論する。
  • 4) チェックリストの共通化を検討する。
  • 5) 監査員と被監査者の立場を入れ替えて交流する。
  • 6) ベテラン監査員による、監査員の評価とOJT訓練を行う。
  • 7) 評価結果は記録し、次の教育・訓練の資料とする。

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