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内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選 質問92〜100

Q92:従来の文書、記録に代わって「文書化した情報」という用語になりましたが、組織の規定も文書化した情報に変更しなければなりませんか?

A92:そんなことはありません。今までの通りでよく、変更しないでください。ISO9001:2015の附属書(参考)A1には以下のような記述があります。

  • 「A.1構造及び用語
  • この規格の箇条の構造(すなわち,箇条の順序)及び一部の用語は,他のマネジメントシステム規格との一致性を向上させるために,旧規格であるJIS Q 9001:2008 から変更している。
    この規格では,組織の品質マネジメントシステムの文書化した情報にこの規格の構造及び用語を適用することは要求していない。
    箇条の構造は,組織の方針,目標及びプロセスを文書化するためのモデルを示すというよりも,要求事項を首尾一貫した形で示すことを意図している。品質マネジメントシステムに関係する,文書化した情報の構造及び内容は,その情報が組織によって運用されるプロセスと他の目的のために維持される情報との両方に関係する場合は,より密接に利用者に関連するものになることが多い。
    組織で用いる用語を,品質マネジメントシステム要求事項を規定するためにこの規格で用いている用語に置き換えることは要求していない。組織は,それぞれの運用に適した用語を用いることを選択できる(例えば,“文書化した情報”ではなく,“記録”,“文書類”又は“プロトコル”を用いる。“外部提供者”ではなく,“供給者”,“パートナ”又は“販売者”を用いる)。」

「・・・は要求していない」というフレーズが2か所出てきますが、2番目のフレーズを読んでいただければ、従来の文書、記録という表現のままでよいことがお分かり頂けると思います。

Q93:状来の「製品」という用語に対して、「製品及びサービス」という用語に変わりましたが、サービスへの監査のポイントを教えてください。

A93:確かに共通テキストでは、「製品及びサービス」が使用されていますが、9001では2000年版で「製品(サービスを含む)」となっておりましたので変わっていないとも言えます。ただ、括弧の中から取り出されたということは、製品と同列にサービスも意識してもらいたいというISOの意図の現れであると思います。
 ISO9001:2015 の附属書(参考)A2には以下のような記述があります。

  • 「A.2 製品及びサービス
  • JIS Q 9001:2008 では,アウトプットの全ての分類を含めるために,“製品”という用語を用いたが,この規格では,“製品及びサービス”を用いている。“製品及びサービス”は,アウトプットの全ての分類(ハードウェア,サービス,ソフトウェア及び素材製品)を含んでいる。
    特に“サービス”を含めたのは,幾つかの要求事項の適用において,製品とサービスとの間の違いを強調するためである。サービスの特性とは,少なくともアウトプットの一部が,顧客とのインタフェースで実現されることである。これは,例えば,要求事項への適合がサービスの提供前に確認できるとは限らないことを意味している。
    多くの場合,“製品”及び“サービス”は,一緒に用いられている。組織が顧客に提供する,又は外部提供者から組織に供給される多くのアウトプットは,製品とサービスの両方を含んでいる。例えば,有形若しくは無形の製品が関連するサービスを伴っている場合,又はサービスが関連する有形若しくは無形の製品を伴っている場合がある。」

このような背景から、内部監査でもサービスを意識して確認をすることが望まれます。まず、XXXマネジメントシステムのなかにサービスの存在が明確になっているか確認をしましょう。その後で、サービスに関する要求事項の適合性をチェックすることがよいと思います。

Ⅹ マネジメントレビューに関する質問

Q94 : マネジメントレビューの開催は経営課題を審議する別の会議体と併せて主催してもよいのでしょうか。当社では、期末に年度予算執行報告会と翌年度事業計画策定会議が経営者主催で行われています。これの中にマネジメントレビューを位置づけて実施してもよいのでしょうか。

A94 : 会議の運営形態と時間配分にもよりますが、マネジメントレビューには内容的に独立した形態と十分な時間配分が望まれます。質問のような形態ですとどうしても売上、損益の審議が優先されがちにならないでしょう。本来マネジメントレビューでは品質情報、内部監査の結果等が審議されるべきですが、一方的な報告のみになってしまう可能性が危惧されます。
マネジメントレビューは、経営課題として最重要事項である顧客に提供する製品の品質や顧客満足に直結するものです。そのため、できるだけ他の会議体とは独立した会議体として運営することを推奨します。
しかし、質問の例のように年度予算執行報告会と翌年度の事業計画策定会議は、一旦終了させ、改めてマネジメントレビューとしての開会宣言、議題確認等を行って、議事を進めるならばこれはこれでよいと思います。別の会議であることを強調するための雰囲気を変える演出もある程度は必要でしょう。
なお、マネジメントレビューの記録も要求されていますので、議事録は独立させておいた方がよいでしょう。

Q95 : マネジメントレビューはどのような項目に対して行うべきでしょうか。

A95 : マネジメントレビューはマネジメントシステムの見直しですからマネジメントシステムの運用状況、結果の全般について行うことはいうまでもありません。
見直しの目的として、「経営者は、この規格の要求事項及び供給者が定めた品質方針及び品質目標を満足するために、マネジメントシステムの見直しを行うこと」を規格は要求しています。
規格の「9.3 マネジメントレビュー」には見直しの項目をインプットとして明示しています。ISO9001ではマネジメントレビューの対象として主に次をガイドしています。

  • (1) 品質目標の達成状況
  • これには、単に達成状況の結果についての確認にとどまらず、品質方針の変更の必要性についての検討も含めて検討・評価すべきです。

  • (2) 顧客満足の実施状況
  • (3) 是正処置に関する情報
  • (4) (内部)監査の結果

以下のことも対象にすべきでしょう。

  • ・ 顧客クレーム、重大な不適合及びこれらの是正処置の状況についての水平展開や遡及処置の確認
  • ・ マネジメントシステムを構成する文書の最新化
  • ・ 組織が決定したリスク及び機会
  • ・ マネジメントシステムの運用結果である品質記録の改善の要否
  • ・ 以上を総合した結論としてのマネジメントシステムの有効性の検討・評価
  • ・ 製品の安全性に関する検討・評価
  • ・ 外部監査の結果と是正処置の状況、水平展開等
  • ・ 外部・内部の重点課題
  • ・ 前回のマネジメントレビューのフォローアップ
Q96 : マネジメントレビューは規定した全ての項目に対して行わなければならないのでしょうか。

A96 : マネジメントレビューの対象にすると規定した項目は、全て必ず毎回レビューすることになります。重点的にレビューしたいならば、年一回の項目と、半年に一回の項目を分けるなど、メリハリをつけた規定にしておく必要があります。
「組織のマネジメントシステム、すなわち、組織の体質をいかに改善してゆくべきか」という観点で重点課題を優先して審議します。
重点課題を明確にするには、十分な情報の収集分析が必要です。これには、内部監査責任者の重要な仕事になります。内部監査責任者は、自組織のマネジメントシステムについて常に適切性、有効性について検討し、把握しているべきでしょう。そして、規定したマネジマントレビューの項目に対応して「マネジメントシステムの見直し及び改善の根拠とするため、マネジメントシステムの実施状況を経営者に報告」しなければなりません。報告内容には、優先度を同時に示すべきで、これにより、経営者は、重点課題に集中して審議できるようになります。また、経営資源の割り当ても含めて、具体的な指示を、出すことができるようになるでしょう。

Q97 : マネジメントレビューにおいては、内部監査の結果は必ずレビューする必要がありますか。

A97 : マネジメントレビューの目的はマネジメントシステムが引き続き適切、かつ、効果的に運営されていることを確実にするためです。内部監査は、マネジメントシステムの有効性を判定するためのものです。このことから、内部監査の結果はマネジメントレビューでの主要議題であるといえます。
 9001:2015にはレビューの対象がたくさん載っています。
マネジメントレビューは,次の事項を考慮して計画し,実施しなければならない。

  • a) 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況
  • b) 品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化
  • c) 次に示す傾向を含めた,品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報
    • 1) 顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック
    • 2) 品質目標が満たされている程度
    • 3) プロセスのパフォーマンス,並びに製品及びサービスの適合
    • 4) 不適合及び是正処置
    • 5) 監視及び測定の結果
    • 6) 監査結果
    • 7) 外部提供者のパフォーマンス
  • d) 資源の妥当性
  • e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1 参照)
  • f) 改善の機会

これら多くのレビュー対象の中で、c)6)監査結果は重要なものです。監査結果には外部監査結果と内部監査結果とに分けることができますが、特に内部事情に詳しい内部監査員の監査結果はトップにとって「転ばぬ先の杖」になるからです。結果をレビューすることも重要ですが、結果を出すであろうプロセスをレビューすることはより事前対応という意味から大切にすべきものです。

Q98 : マネジメントレビューでの報告、質疑などの時間は10分程度です。特に質問も出ませんが、これで要求事項に対して適合しているといえるでしょうか。

A98 : 責任者は経営者にXXXマネジメントシステムの状況を十分に説明し、理解してもらい、改善に役立つようにしなければなりません。組織の規模にもよりますが、10分程度の時間で目的を達成できるとは思えません。
規格に対する適合性という面では、マネジメントレビューの記録があればよいと思われがちです。しかし、経営者からの「意味ある指示、コメント」がない限り、規格の真意である組織のXXXマネジメントシステム見直しがされたとは言い難いと思います。実態は規格に対して不適合であると考えられます。
内部監査は、マネジメントシステムの有効性を判定するために行われます。有効性の判定が、内部監査の結果としてマネジメントレビューで報告されるはずです。しかし、なかなかそうなりません。その原因は一つには有効性を判定する基準が定まっていないこともあるでしょう。また、経営者にマネジメントレビューを最大限に活用してマネジメントシステムの改善に役立たせようとする意識が低いこともあります。
解決策は、内部監査責任者が内部監査の持つ意味をよく考えることです。その組織のマネジメントシステムのレベルを向上させるために内部監査の方法に工夫を凝らします。単に、「決めた通りに実行しているか」だけでなく「その決め方が良いのかという観点でマネジメントシステムの改善のきっかけを掴む(問題発見)、及び改善の実施を確認する」という観点で内部監査を行います。そして、これに執着心をもって取組みます。そうしないと、マネジメントレビューにおける報告にも迫力が出ません。報告を受ける経営者も組織の仕組みの改善に繋がるような意味のある指示ができません。

Q99: マネジメントレビューへの内部監査の報告はどのようなものが効果的ですか。又、経営者に内部監査の結果を活用してもらうにはどのようなアプローチが有効でしょうか。

A99 : 内部監査の目的は品質活動及び関連する結果が計画された通りになっているかの検証とマネジメントシステムの有効性を判定することです。この観点からのメッセージを経営者に報告するものでなければなりません。又、マネジメントレビューに報告することの目的は、経営者みずから定めた経営方針及び目標の達成状況とマネジメントシステムの適切性、効果的運用を確認するためにあります。従って、内部監査の結果を次のように整理して報告すべきです。

  • 1. 指摘事項を一覧表にまとめる。
  • 2. 重要事項を明示する。
  • 3. 仕組みとして見直す項目を明確にする。
  • 4. 経営者自身が解決しなければならない問題を明確にする。

次のような要件は網羅的であり実用性の高いものです。

  • ・ 観察結果の全般的所見
  • ・ マネジメントシステムの有効性
  • ・ 是正処置の要求項目、是正処置期限、不適合の傾向
  • ・ パフォーマンス(実績評価)
  • ・ 改善提案、勧告
  • ・ 総合評価
  • ・ 必要な場合、経営者の個別部門に対するコメント

マネジメントレビューの議事録には、内部監査の結果に対する経営者のコメントを記入できるように工夫するとよいでしょう。

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